ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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暴走と好走塁は紙一重~京田陽太の「前」へ進む意志

●0-1DeNA(3回戦:バンテリンドーム)

 思いがけないことが起こる世の中だ。まさか東京ドームでの奇跡の逆転劇を経て、本拠地ナゴヤで3連敗を食らうとは考えもしなかった。なんなら小笠原慎之介、高橋宏斗、松葉貴大の強力裏ローテで3連勝できる予感こそしていたのだが、蓋を開けてみればこの有様である。

 本拠地に3日連続で足を運んだという熱心なファンも多かろう。大敗ならまだ諦めもつくが、初戦を除けば決してワンサイドの劣勢ではなかった。だからこそ歯がゆい。「あと一本」がどこかで出ていれば、まったく違った展開になっていただろう。

 昨日チャンスでダブルプレーを叩いたビシエドが、今日はマルチ安打。先発の松葉貴大は、開幕ローテで投げた6人のなかでもダントツの安定した投球を見せてくれた。リリーフ陣だってライデルは失点したものの、他の3人は危なげなく仕事をこなした。今日に関してはベンチワークに特に問題があったとは思えない。

 それでも勝てないのは、投打のかみ合わせが絶望的に悪いからとしか言いようがない。誰が悪いとかではなく、運が悪い。強いていえば宇一郎が悪い。というのは冗談だが(あながち冗談でもない)。

 阪神ともども負の連鎖に突入してしまった感はあるが、今はただ「明けない夜はない」と信じて耐え忍ぼうではないか。

果敢に「前」を見据えたプレーに対して、立浪監督は「是」を示した

 濱口遥大を久しく打った覚えがないと思い、調べてみるとそれもそのはず。去年は2試合12イニングで無得点。今日の8回を合わせると、年を跨いで20イニング無得点という悲惨なまでのドラゴンズキラーっぷりが明らかになった。

 チェンジアップを得意とするサウスポー。この手の投手を攻略するには経験こそがモノを言う。岡林勇希、鵜飼航丞、石川昂弥と若手の並ぶ打線にとってはちょっと厳しい相手だったか。この投手が6番手で出てくるDeNA投手陣は決して弱くないと思うのだが、6番手に平気で8回零封をやられてしまう中日が特別弱いのか? と思ったら泣けてきた。

 おそらく今夜、熱心なファン同士が論じるのは「京田陽太、三塁を狙うべきだったのかどうか問題」だろう。その気になればこのネタだけで夜通し議論することだってできる。それくらいこの試合において、あの走塁は重要な意味を持ちすぎてしまった。

 8回裏、先頭で打席に向かう京田を呼び止め、立浪監督が二言、三言、何かを伝えた。不振を極める背番号1に対して、どんな言葉をかけたのだろうか。打席に入る前の立浪のアドバイスが功を奏した例といえば、古いファンなら2007年8月11日の堂上剛裕のサヨナラ3ランを思い出すかもしれない。立浪の言葉には何かしらの “力” があるのだ。

 カウント2-1から京田がバットを振りぬくと、打球は右中間を真っ二つ。フェンスに達する間に、京田は俊足を飛ばして二塁を回り、さらに三塁を狙って疾走。ついに濱口攻略の突破口を開いたかに思われた。

 しかしヘッドスライディングもむなしく間一髪で返球が速く、無念の走塁死という形に終わった。これには立浪監督もガックリと全身で悔しさを表現。だが、天を仰ぐでもベンチを蹴り上げるでもなく、立浪監督は親指で「グーサイン」を作り、京田の積極性を称えたのである。 

 無死という状況的にもムリするような場面でもなく、暴走といわれても仕方のない走塁だったのは間違いない。それでも果敢に「前」を見据えたプレーに対して、立浪監督は「是」を示した。暴走と好走塁は紙一重。「二塁で止まっときゃ良かった」というのは結果論であり、無意味な仮定だ。

 どんなに失敗しても、前へ進む意志をなくさない限りチームは大丈夫。それを開幕からいいとこ無しの京田が見せてくれたのも意義深い。結果的にアウトにはなったが、ずっと内野ゴロなど凡打が続いていた京田にとって、今季初めてと言ってもいいくらいの息を切らした瞬間だろう。これでエンジンも温まったはず。ようやく京田の “今シーズン” が始まった、と私は捉える。

 京田にも快音が飛び出し、木下拓哉のバットにも当たりが出始めた。大丈夫、まだいける。立浪ドラゴンズの逆襲は近いと確信できる。で、明日の相手先発は……うん、まあもうしばらく我慢かな。

木俣はようやっとる (@kimata23) | Twitter