ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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どっちが4番だ?〜不調のビシエドと、プロ初本塁打の鵜飼航丞

●6-7DeNA(2回戦:バンテリンドーム)

 一方的な負け試合をよく追い上げたと言うべきか、勝てた試合を落としたと言うべきか。8回裏1死一、二塁で打順は4番。これ以上ないお膳立てのはずが、このチームでは機能しない。この日最高の盛り上がりを一瞬にしてため息に変えるダプルプレー。主砲ビシエドのブレーキが反撃ムードに水を差す格好となった。

 厳しいようだが、敢えて言わせてもらう。4番とはああいう場面で打ってこその存在ではないのか。3番を打つ鵜飼航丞がガッツポーズをみせた執念のタイムリー。あの流れでトドメを刺さなければ、一体いつ打つというのか。

 新外国人を補強しなかったのは、「お金がない」という身も蓋もない事情は置いておくとして、首脳陣がビシエドにその分を補う活躍を託したのも理由の一つとされている。

 3年間の大型契約を新たに結んだ今季、ビシエドは従来のアベレージフォルムからパワーフォルムへの転換を期待されている。立浪監督が掲げるチーム本塁打数100発という目標に向けて、ビシエドに課されたノルマは40本。昨季17本だった打者に対して高望みの感は否めないが、本来のポテンシャルを発揮すれば決して不可能な数字ではないと首脳陣は考えたわけだ。

 ただ、今のところ目に見える大きな変化は確認できていない。悪癖である払うようなスイングを含め、今年もビシエドはビシエドだなと。開幕戦こそ幸先よくホームランを放ったものの、その後はいつもの姿に戻ってしまったようだ。件のゲッツーなどはまさにビシエドらしい、迫力不足の凡打だった。

 4番を打つ限り、そのバットはチームの勝ち負けに直結する宿命にある。良きにせよ悪きにせよ、立浪ドラゴンズの浮沈はビシエドに懸かっているといっても過言ではない。

 流れを止めるバッティングではなく、流れを掴むバッティングをーー。懐かしき2016年開幕カード、「とんでもない助っ人が来た!」とワクワクさせてくれたあの時のバッティングを、もう一度見せてほしい。

プロ入りわずか11打席目の記念弾

「グシャッ」という破裂音と共に、舞い上がった打球はレフトスタンド中断に突き刺さった。記念すべきプロ初本塁打となった鵜飼航丞の一撃は、見る者を圧倒する「エグさ」に満ち溢れていた。

 プロ入りわずか11打席目の記念弾だった。「クリーンアップが一人足りない」という立浪監督の悩みを一発で解消するような驚弾には、追撃の2ランという意味合い以上に「竜の未来」が詰まっていた。

 本塁打だけでは終わらない。8回裏、怒涛の反撃をみせる打線のなかで鵜飼もまたしっかりと流れに乗ってみせた。凡退した打席を含めて今日は4打席すべてファーストストライクをスイング。臆することない攻めの姿勢は、甘い球を簡単に見逃してしまう他の打者も学ぶべき点は多いはずだ。

 1点ビハインドで迎えた9回裏には、ベンチの最前列から目を輝かせながら味方に声援を送る姿が印象的だった。1999年生まれの鵜飼は俗にいう “Z世代” にあたるが、掴みどころのなさが特徴とされるこの世代にあって、鵜飼は勝利への意志が前面に出たガッツ溢れる選手である。きっとこういう選手がレギュラーを掴み、球団史を塗り替えていくことになるのだろう。

 キャンプから一貫して想像を上回るポテンシャルを見せてくれているが、今日の活躍は格別だった。少なくとも今のドラゴンズにあれだけ飛ばせる打者はいないのだから、鵜飼は当面使われるべきである。

 高橋周平の復帰後は阿部寿樹がレフトに収まるかと思われたが、いやいやそんな事はない。何ならどこかで4番を任されるフェーズだって、冗談抜きで訪れるかもしれない。もちろんそれは、このままビシエドが低迷した場合の話であり、ルーキーにそんな重荷を背負わせたくないのが本音ではあるが。

 とにかく今は岡林勇希と鵜飼の打席が楽しみでならない。どこかでカチッと新旧の力が噛み合えば浮上も全然できると思うのだが……。いずれにせよ言えることはただ一つ。「ビシエドだよ、ビーシーエード!」。4番の奮起を願う。

木俣はようやっとる (@kimata23) | Twitter