ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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二つの収穫~天才・岡林勇希とリリーフ転向ジャリエル・ロドリゲス

〇4-2ロッテ(オープン戦:バンテリンドーム)

 オープン戦も残り2試合となり、いよいよ本番に備えた選手起用が見られるようになってきた。その中で未だに日替わりの様相を呈するのが打順である。1,2番の大島洋平、岡林勇希の快速コンビ、4番ビシエド、7番石川昂弥、8番京田陽太はほぼ確定として、今日は木下拓哉を遂に5番に昇格。実質的に他の誰よりも秀でた長打力を活かすため、「捕手だから」という固定観念を捨て去ってクリーンアップに据えたのは英断だと思う。

 その期待通りに豪快な先制3ラン、さらにタイムリーと全打点を叩き出す活躍ぶりには、とうとう中日にも木俣達彦以来の強打の捕手が現れたかと感慨を覚えたものだ。

 そして、いずれの得点も起点となったのは岡林のヒットだった。一時落ちかけた打率も再び3割台に戻し、開幕ライトのポジションを実力でもって掴み取った。思えばオープン戦が始まるまでは外野を競う他の選手たちと同じ “挑戦者” の立ち位置だったが、初戦の阪神戦でみせた天才的なホームインをはじめセンスの違いを随所に発揮し、早くもチームになくてはならない存在になりつつある。レギュラーを掴む選手は、こんな風にとんとん拍子でステップアップしていくんだなと、久々に感じさせてくれる存在だ。

 怖いものなしのスタンスもいい。このオープン戦での盗塁失敗は12球団最多の6を数えるが、当の本人は「失敗から学ぶことは多いと思います」とケロリとしたもの。プロ初ヒットを記録した2年前の試合ではせっかくの初出塁を牽制死でフイにしてしまった過去もある。人は失敗が重なると意思に反して体が動かなくなってしまうものだが、岡林にはそもそも失敗を恐れないという特性が備わっているようだ。

 野球ファンというのは若手の失敗に対して「これも勉強」と前向きに捉える節があるが、結局のところ失敗を糧にできるかどうかは本人次第。むしろほとんどの選手が同じ失敗を繰り返しながら球界からフェードアウトしていくのが実情ではなかろうか。その中で岡林は、間違いなく失敗を活かしてレベルアップできるタイプの選手であろう。ベンチでは熱心な顔つきで立浪監督から直接指導を仰ぐシーンが目立つ。こういう姿勢ひとつ取っても、怖いものなしの性格がよく表れている。

 まだあらゆる面で物足りなさはあるが、2022年のオープン戦最大の収穫が岡林であることは疑いようもない。

先発から配置転換で大活躍--34年前の好例

 収穫といえば、こちらもいい感じでアピールに成功している。リリーフに配置転換のジャリエル・ロドリゲスだ。元々160キロ近い真っすぐを武器にするエグい投手ではあったが、突如として崩れる悪癖が玉に瑕。ポテンシャルを最大限に発揮すべく、今季から “短期集中型” のリリーフに回ったという経緯を持つ。

 今日は2点リードの9回表にクローザーで登場。150キロ超の真っすぐとキレ味鋭い縦スライダーのコンビネーションがこれでもかと決まり、3者連続三振という圧巻の投球でゲームの幕を閉じた。その自信満々の表情たるや。そういえば守護神ライデル・マルティネスも来日当初は先発投手だったが、本格覚醒したのはリリーフに転向してからだ。来日3年目のジャリエルにも同じ成長曲線を夢見てしまうのはやむを得まい。

 古い話で恐縮だが、中日の歴史にはこんな例もある。その投手は光るモノを持ちながら、ジャリエルと同じく集中力の途切れたところで痛打を浴びるという悪癖があった。そこで時の監督は、自慢の剛球を思う存分活かせる場所としてストッパーという役割を与えた。すると水を得た魚の如く活躍し、遂にはシーズンMVPを獲得してしまったのである。その投手とは、郭源治。1988年の出来事である。

 この年に入団したのが立浪和義。もし立浪監督が心のどこかでジャリエルと郭源治を重ね合わせているとしたら……木俣はもう泣いています。

木俣はようやっとる (@kimata23) | Twitter