ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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今年も仕事人! 松葉貴大の味のある投球

●0-4巨人(オープン戦:バンテリンドーム)

 コロナ禍がもたらした「よかった事」のブッチギリ首位を走るのが、会社の飲み会文化である。とりわけ春といえば歓送迎会。花見の場所取りを早朝から……なんて光景はコロナ前から既に消えつつあったが、それでも酔い潰れた上司の介抱やら一発芸の類は、この国でサラリーマンでいる限りは逃れられない処世スキルでもあった。

 忘年会と並び、若手社員が一年間のなかで最も神経を消耗するこのシーズン。しかし必ずしも気配りができるヤツ、場を盛り上げることのできるヤツばかりではない。当然、そうした “飲み会しぐさ” が不得手な人間だっているわけだ。それでも2,3時間の飲み会の間に必ず一度は「おい〇〇、何かやれよ」の無茶ぶりが飛んできたりする。笑顔をひきつらせながら、貧弱なレパートリーの中からかろうじてウケそうなネタをひねり出すあの数秒間はまさしく生き地獄。社会の厳しさを痛感する瞬間である。

 こんな時、ずん飯尾みたいなスキルが欲しいと思ったりする。決して輪の中心に立つことはないが、「ペッコリ45度 飯尾和樹です」みたいなちょっとした一言で確実に笑いを生むことができる安定感。人当たりがよく、淡々と空気を読んで仕事をこなす便利屋っぷりは、多分どこに行っても重宝されるはずだ。

 ドラゴンズの松葉貴大も、そういうタイプの投手だと思う。先発ローテの4,5枚目できっちりと仕事をこなし、ベンチの期待に応える仕事人。エースと呼ばれることは今後も無いかもしれないが、いなきゃ困る存在としての価値は非常に高いものがある。「おい松葉、5回1失点にまとめてこいよ」と言われてきっちりと実行できる先発投手がどれだけいるだろうか。どうやら今年も松葉には何かと助けてもらうことになりそうだ。

どんなに良くても5回でスパッと代える割り切り

 5回3安打1失点という内容以上に、松葉の安定感はいつもに増して抜群だった。目を見張るような速球があるわけでも、魔法のような変化球があるわけでもない。いわゆる技巧派に分類されるサウスポーの、いったい何がそれだけの安定感を生むのか。

 降板後、松葉は僕の場合はピンチでどれだけ粘れるかが大事。結果的に1点は取られたがゴロだったし、自分の中では割り切っているスポーツ報知)と振り返ったようだが、今日に関してはピンチらしいピンチも4回表の1死二塁くらいのもので、終始危なげない投球ができていたと思う。

 注目すべきは、カウントの整え方のうまさだ。今日対戦したのべ18人のうち、3ボールとしたのは3回表の若林晃弘のみ。また0-2からの3球目は必ずストライクを取っており、一貫して投手優位のカウントを作りながらテンポよく投げていたのが印象的だった。投手はストライクさえ取ればそうは崩れないという鉄則に則った投球。さすがは10年この世界でメシを食っているだけある、ベテランらしい味のある内容を堪能させてもらった。

 今日は5回で降板したのでよかったが、松葉といえば中盤以降に突如つかまるクセがあり、昨年の解説席では川上憲伸氏が「そういう投手なんだから(中盤以降に)使う方が悪い」と訴えていたほどだ。大野雄大、柳裕也という完投タイプの両輪に加え、スタミナに課題のあった小笠原慎之介も7回までは難なく投げられるだけの体力はついた。松葉には無理して6回以降も投げさせるのではなく、どんなに良くても5回でスパッと代える。リリーフ陣の稼働次第ではあるが、松葉にはそのくらいの割り切りが必要なのかもしれない。

 ずん飯尾並みの安定感を誇るのはバンテリンドームの5回まで。ビジター球場になると、「忍法ランナー残し」の如くマウンドからドロンしてしまう不思議な投手である。

木俣はようやっとる (@kimata23) | Twitter