ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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がんばれ石川昂弥! 使い続けた先に “覚醒” は待っている

〇6-2巨人(オープン戦:バンテリンドーム)

「今年の中日は手ごわいと思わせる」と開幕カードの前哨戦となる巨人戦に向けて抱負を語っていた立浪監督。久々に帰ってきた本拠地でDH制を採用せず、このままの形で開幕と言われても違和感のないガチオーダーを組んできた。

 試合は初回から大きく動いた。先頭の岡林勇希が初球を捉えて出塁すると、大島洋平、福留孝介も続いてあっという間に無死満塁である。立ち上がりに苦しむ山口俊は顔をしかめるなど早くも青息吐息。一気呵成に攻め込みたいところだが、ドラゴンズファンは知っている。このパターンは、得点にならないことを

 余談になるが昨年、メットライフドームに西武-オリックスを観に行った際の話をひとつ。西武が無死から一、三塁だか二、三塁のチャンスを作ると、後ろの席に座っていた西武ファンが自信あり気にこう呟いたのだ。「よし、最低1点は入るぞ」と。

 驚いた。そして羨ましかった。ドラゴンズなら内野ゴロでもパスボールでもどんな形でもいいから、せめて1点なんとか転がり込んで来ないものかと神頼みするような場面だ。なのに西武はチャンスとなると得点を確信できてしまうのだ。同じ野球でもこうも感覚が違うものかとカルチャーショックを受けた瞬間だった。ちなみに西武はこの後、ファンの想像通りにあっさりと得点したから、尚のこと驚いた。

 話を中日に戻す。無死満塁で期待がふくらんだが、4番ビシエド、5番高橋周平が共にポップフライで2死を献上。なんてことない、去年まで見飽きるほど見てきた光景だ。やはり西武のようにはいかない。「今年の中日は手ごわい」あらため「今年も中日は手ぬるい」じゃねえかよと缶チューハイ片手にぼやいたのも束の間。6番を打つ木下拓哉の放ったライナー性の打球が、巨人ファンがまばらに座るレフトスタンド中段へと着弾したのである。

 ドラゴンズのグランドスラムは昨年5月4日の根尾昂以来。年イチで出るかどうかの縁起物がオープン戦でいきなり飛び出したのはめでたいが、贅沢を言うなら本番に取っておきたかったほどのみごとな当たりだった。

 しかし昨年までなら間違いなく2死を取られた時点で「詰み」、絶好の好機を逃したのが最後まで尾を引いて負けるパターンだったに違いない。それが、なんと一打で4点入ってしまうのだから、やっぱり本塁打は正義だ。今年の中日は手ごわいだけでなく、「本塁打でも点が取るぞ」と巨人ベンチに思わせることが出来ただけでも大いに収穫のある試合だった。

今季の泣き所ははっきりと「サード石川」という事になってしまうだろう

 小笠原慎之介が幾度ものピンチを凌いで7回無失点の好投をみせれば、オープン戦序盤まで本調子ではなかった谷元圭介も危なげなく8回の1イニングを切り抜ける。こうなれば6-0の横綱相撲で押し切って欲しかったが、9回を任された田島慎二がピリっとしない。1死から安打、四球、四球で満塁のピンチを背負う。巨人戦で幾度も辛酸を嘗めてきた田島は、今年もなお苦手意識を払拭できずにいるようだ。

 ただ、続く代打・大城卓三の三塁ゴロは本来であれば完璧な併殺コースだったのは強調しておきたい。捕球できていれば5-4-3で試合は終わっていたが、石川昂弥の後逸がここで出てしまった。強い当たりには違いないが、「強襲」と呼ぶほどの球足ではなかったのもまた事実。あれを捕れないようだと、今季の泣き所ははっきりと「サード石川」という事になってしまうだろう。

 打つ方も3タコ(1四球)と今一つの結果に終わり、表情も陰りがち。でもきっと立浪監督は最後まで辛抱し、開幕でもスタメンに据えるはずだ。それだけ石川は逸材であり、竜の未来は石川の成長に懸かっているといっても過言ではないのだ。せっかちなファンは早くも我慢できず、サード高橋、セカンド阿部寿樹の布陣を望む向きもあるようだが、いくら何でも早漏すぎるっちゅーの。

 生みの苦しみならぬ覚醒の苦しみ。石川くんが一体いつ、どこで、どうやって覚醒するのか? 答えは使い続けた先に待っている、はずである。

木俣はようやっとる (@kimata23) | Twitter