ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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投手への声かけで思い出したこと~石森×落合ヘッドの例から~

 13日のオリックス戦で興味深い場面があった。

 8回裏、制球を乱した石森大誠のもとへ落合英二ヘッド兼投手コーチが駆け寄る。肩を抱き、柔和な雰囲気の中で言葉を交わす。マウンド上の輪が解けたあと、石森のボールは明らかに変わり、結果ノーアウト満塁のピンチを無失点で凌いだ。

 オープン戦初登板の新人には荷が重いと思われた場面。そこで絶妙な間を取り、場を和ます。14日付『中日スポーツ』によれば、「ボディータッチは山田(久志)さんの受け売り」とのこと。これぞ数々の経験を積んできた落合コーチならではの芸当だろう。

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思い出したのはWBC、岡田を救った小林

 一連の流れを見ていて真っ先に思い出したのは、2017年WBCの岡田俊哉と小林誠司のやり取りだ。

 1次リーグのオーストラリア戦、2番手で登板した岡田は暴投と与四球で1死満塁のピンチを招き、次打者に対しても2球連続ボール……。岡田はマウンド上で顔面蒼白である。

 ここで捕手の小林が岡田に駆け寄り二言三言声をかけると、次の球で4-6-3のゲッツーに仕留め、ピンチをくぐり抜けることができた。後日談で知ったことだが、このとき小林は「何が投げられる?」「一番自信のある球をど真ん中に投げよう」と話したそう。間を取って投手を正気にさせる、見事な導きだった(巨人の選手であることは置いておいて)。

投手への声かけはオレ流の得意技

 ピンチで投手に声をかけるのは落合博満の得意技でもあった。選手・監督のどちらでも共に戦った山本昌は振り返る。

「僕が(マウンドで)苦しんでいるときに、ふらっと来てくれるのが落合さんでした。後ろに手を組んでファーストからつかつか歩いてきて、ぼそっと言う。『ここ頑張んないと勝てないぞ』とか試合展開についての一言なんですけど、間を取ってもらうのに本当に良かったというのはありますね」
(出典:『証言 落合博満』p.48)

 また、落合政権で野手コーチの要職を務めた高代延博は、こんな経験をしたという。

「1年目(2004年)かな。普通、ベンチからマウンドには投手コーチが行くけれど、監督から『行け』と言われたんですよ(中略)。『やだなあ、みんなオレのほう見てるなあ』と思いながら行きました。選手たちに “あれ? 何で?” と思わせるのが仕事だったんだと思います。ちょっと違うところに意識を置いて、気持ちの切り替えをさせるために」
(出典:『証言 落合博満』p.40)

 結局は高代の言う「気持ちの切り替え」が声かけの主たる目的なのだろう。コーチだけでなく、野手陣の中では京田陽太がよく行う印象だが、最終的には投手が孤独感に苛まれなければOKかなと感じる。

 ちなみに、石森は試合後「すごいビッグマウスかもしれないが、自分の球を投げれば打たれないと思っている」とコメント。いい意味での「過信」に加え、抑えられる経験を得た今後は、むやみに声かけをする必要はないのかもしれない。

Ikki KAGA (@ikki_0306) | Twitter

石森コメント引用:『東京スポーツ』