ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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忖度なき改革~レフト大島洋平を断行した立浪監督の恐るべき実行力!

〇4-1オリックス(オープン戦:京セラドーム大阪)

 立浪監督は圧倒的に「攻め」の将だと思う。やりたい事、やるべき事を即決即断で実行に移せるのは大所帯を率いるうえで必要不可欠な能力だが、現実にはこれができる監督はそう多くない。このあたりは星野仙一と落合博満という両カリスマの下で働いた経験はさる事ながら、元来生まれ持つリーダー的素質も大きいのだろう。

 とりわけ今季のドラゴンズのように、「若手育成」を旗印に掲げるチームは勢いに乗る若手を旬のうちに登用する積極性が求められる。監督が黙っていても選手が働いてくれる成熟したチームならいざ知らず、実績のない若手が多数を占めるドラゴンズの監督として立浪は適任だといえよう。

 それにしても今日のスタメンには驚いた。ブライト健太、福元悠真をいきなり起用したのもそうだが、なんといっても度肝を抜いたのは3番大島洋平のレフト起用である。前にも書いたが、ベテラン選手の起用ほど監督が神経を使うモノは無いと聞く。影響力の強いベテランの機嫌を損ねることは、チーム瓦解に直結する恐れがあるからだ。

 大島自身、昨年12月の『サンデードラゴンズ』へのスタジオ出演でセンターの後継者について問われた際に、「(候補は)いっぱいいるけど譲れる人がいないです。まだ譲れる力の人がいないです」と若手の力不足を指摘したうえで、譲る気など毛頭ないというプライドを滲ませていた。いっぽうで、大島のセンター守備の指標が年々悪化しているのは周知の事実であり、熱心なファンの間では2,3年前から負担の少ないレフトへのコンバートを推す声が挙がり始めている。

 この件については具体的なデータをもって分析したRapsodo Japan所属・ロバートさんの記事が秀逸なので、詳しくはこちらをご参照いただきたい。

plus.chunichi.co.jp

ルーキーを使いたいがために聖域を譲らせるという、大胆としか言いようのない采配

 若手時代の2010,12年に途中交代でライトを守った事こそあれど、レフトに就くのはプロ入り後初の出来事。それも有事に備えた1イニング限定のお試し運用といった起用ではなく、大胆にもスタメンで使ってしまうのが立浪流だ。これほどの選手の起用法を変えるには年単位での説得を要し、周囲と本人が納得した段階でようやく実行に踏み切るのが通常の流れである。大物ベテランの処遇は多くの監督にとって在任中の最大のミッションとも言える大仕事であり、これが原因で確執が生まれた例は枚挙にいとまがない。

 覚悟を決めて起用法を変えるとしても、それなりの根拠が要る。何せゴールデン・グラブ賞9度受賞の名手・大島洋平をセンターから外すのだ。よほどの根拠がなければ本人も納得できないだろう。しかし、この点においても立浪監督は明朗かつ軽快だった。大島の代わりにセンターに入ったのは、なんとブライトである。今日上がってきたばかりのルーキーを使いたいがために聖域を譲らせるという、大胆としか言いようのない采配だ。

 もちろん裏では本人への丁寧な説明と承諾を得たうえでの起用だとは思うが、もし外様監督が同じことをやれば、内外から異論の声が噴出するのは避けられない。現役時代からの圧倒的な人気と実績、そしてOBを掌握する立浪監督だからこそ許される芸当であろう。

 今日4安打と復調の兆しをみせた高橋周平もセカンド挑戦は本意ではないだろうが、立浪が目指す改革には「忖度」の二文字もなければ、「ベテランへの配慮」という厄介な慣習も関係ないことがはっきりと分かった。

 大島のレフト起用という、今後数年にわたって付きまとうと思われた難題をいとも容易くクリアしてしまった意義は、あまりにも大きい。

木俣はようやっとる (@kimata23) | Twitter