ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

MENU

「グシャン!」鵜飼航丞の打球音は凶器だ

●1-6阪神(オープン戦:甲子園球場)

 バットがボールを捉えたときの効果音といえば、一般的にはもっぱら「カキーン」が主流を占める。たぶん街頭調査をすれば8割方が「カキーン」と答えるだろう。実際は木製バットで「カーン!」と気持ちのいい音が響くのは本塁打など真芯を食ったときくらいで、ほとんどが「カツッ」とか「コンッ」という鈍い打球音だ。

 「カキーン」の金属バットを使用する高校野球に比べて、プロ野球が味気ないと言われるのは、この “音” 問題の影響も大きいと思う。灼熱の甲子園に響き渡る乾いた金属音は、青春の輝きを聴覚でも感じさせる作用を持つ。「カキーン」という音色、打球の行方を追う女子生徒の眼差し、選手たちの純粋に満ちた表情、汗、涙……。あれがもし木製のような鈍い音なら、『熱闘甲子園』の魅力も3割ほど目減りするのではないか。

 一方でプロ野球はといえば、そもそも応援歌とラッパの音に搔き消されるので「バットの音を楽しむ」という文化自体が希薄であるように感じる。このコロナ禍の2年間でようやく意識してバット音を聞く習慣ができたのだが、選手個々によって微妙な個性の違いがあって、これが実におもしろい。同じ楽器を使っても演者によってクセが出るように、バットもある意味で打楽器の一種と言えるのかもしれない。

 しかしドラゴンズは貧打とあって、内野ゴロ特有の「スコンッ」という間の抜けた高音こそ辟易するほど聞けるのだが、胸のすくような気持ちのいい音は、なかなか鳴ってくれないのが実情だ。

 そんな中で本日の阪神戦、一方的な展開で集中力も散漫になっていた最終イニングに、思わず身を乗り出してしまうような凄まじい破裂音が鼓膜に飛び込んできた。言語化するなら、「グシャン!」。まるで鈍器で背骨を叩き潰すような音を出したのは、鵜飼航丞だ。打球は伸びが足りずセンターフライに終わったものの、あれだけの音が出せる選手はそうはいない。ほぼ凶器。ここから実戦経験を積み、もっと(相手にとって)残虐な打球音を鳴らせるようになるのかと考えるだけでワクワクする。

 打席内容はもとより、今後は鵜飼が繰り出す “音” にも注目してみたい。

早くも立浪監督のシーズン・マネジメントは核の部分が破綻してしまった

 しかしまぁ、今日もまた見どころに乏しい試合になってしまった。22イニングぶりの得点も犠牲フライでは今ひとつ心が晴れない。昨季に続いて今年も貧打に苦しむシーズンになるのかと身構えてしまうのも無理はなかろう。

 誤算の一つがアリエル・マルティネスの不振である。長距離砲がどうしても必要な中で、立浪監督の出した答えは “アリエルに託す” だった。

「アリエルより飛ばせる打者が候補の中にいなかった」ことが、新外国人獲得を踏みとどまった最大の理由だったはずだが、そのアリエルが不振で降格となると、早くも立浪監督のシーズン・マネジメントは核の部分が破綻してしまったことになる。

 球団は今日、キューバから新外国人のギジェルモ・ガルシアが来日したと発表したが、あくまで即戦力ではく数年先を見据えた育成契約の選手だ。となると一軍登録の外国人野手はビシエドのみ。あとは現有戦力の底上げと、若手の突き上げに期待するしかない。うむ、分かっちゃいたけど厳しい船出になりそうだ。

 ただ、外国人の補強期限までまだ4ヶ月も残っている。過去にもシーズン途中で来日し、大活躍した選手は数知れず。アリエルがこのままダメっぽいなら、宇一郎を説得して補強に踏み切るのも全然遅くない。「グワァラゴワガキーン!」とまではいかなくても、「カキーン!」的な打球音を響かせる打者が一人加われば、だいぶ状況も変わると思うのだが……。

木俣はようやっとる (@kimata23) | Twitter