ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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嗚呼、零封のナゴヤ球場~光明は「ドラ1ローテ」に割って入る岡野祐一郎の好投

●0-2オリックス (オープン戦:ナゴヤ球場)

 ナゴヤ球場のドラゴンズといえば「イケイケどんどん」の強竜打線が名物。5点取られたなら6点取ればええがね的な派手な野球は見栄っぱりな名古屋人の心をつかみ、あの頃のドラゴンズはナゴヤ球場共々、地域に広く愛されるシンボル的な存在だった。ナゴヤドーム移転から26年の月日が経っても、古いファンの中には未だにナゴヤ球場を懐かしむ声が根強く残る。かく言う私もその一人だ。

 近年、そのナゴヤ球場でオープン戦が開催されるようになった。2019年に「一日限定」と銘打って復活した時には小躍りしたくなるほど嬉しかったが、それ以降は毎年この時期に開催している。しかし、残念なのは試合の内容だ。今日の敗戦を含めて0勝5敗。うち3敗は零封負けと、強竜打線が聞いて呆れるような淡白な試合運びでファンをガッカリさせているのだ。

 かつてこの地で黄色い声援を浴びながら躍動した立浪監督にとっても、たくさんの思い出が詰まった球場である。鬼の形相で仁王立ちする星野監督、座席の3人分くらいを占領してふんぞり返る落合博満という強烈すぎるダブル個性に挟まれながら立浪がプロのスタートを切ったのは、34年前の春のことだった。

 そして立浪が最後にこの球場で戦ったのは、言うまでもなく1996年10月6日。全中日ファンにとって「屈辱の日」と記憶されるこの日以降、今なおドラゴンズは白星を供えることができていない。

 だからこそ勝ちたかった。この球場に育てられたといっても過言ではない立浪が指揮をとり、26年ぶりの勝利を捧げることができればいい供養になっただろうに。よりによって零封とは……。

狙って三振が取れる “ニュー岡野”

 こういう試合展開はブログを書くのも苦労する。石川昂弥、鵜飼航丞といった次世代を担う若手スラッガー達の本塁打でも飛び出せば、かつての強竜打線と絡めてエモーショナルな文章も書けるというものだが、何しろ見せ場らしい見せ場が無いのだから困る。

 終盤、ようやくめぐってきた好機もゲッツーであえなくポシャる。福留さん、そりゃないよ。でも左投手に対して代打福留孝介を送った采配は興味深い。立浪監督はいわゆる「左右病」の罹患者ではないようだ。

 さて、こんな塩試合のなかでも輝きを放ったのが岡野祐一郎である。大卒社会人経由の入団とあって3年目ながら今年で27歳。そろそろ結果を残さないと首筋が寒くなる立場だ。昨日の鈴木博志に続いて開幕ローテ入りを懸けた大事な登板。ここで岡野は5回無失点のすばらしい投球を披露し、2週間後に迫る開幕に向けて大きく前進した。

 最大のピンチは3回表。2安打と死球で1死満塁として、打席には4番・杉本裕太郎。一発はもちろんのこと、タイムリー一本も許されない厳しい場面を迎えた。昨年までの岡野なら長打を恐れて制球を乱し、置きにいったところをガツンとやられていただろう。ところが今年の “ニュー岡野” は一味違う。ストライクゾーンからボールゾーンへと消える変化球を絶妙のコースに投げ分け、最後は決め球フォークで空振り三振。昨季の本塁打キング相手にも臆することなく持ち球を駆使し、狙って三振が取れる投球術をみせてくれた。

 今朝の中スポ一面の見出しは「あるぞドラ1ローテ」。大野雄大、柳裕也、小笠原慎之介、福谷浩司、高橋宏斗、それに鈴木博志、岡田俊哉、松葉貴大を加えて先発候補者が「全員ドラ1だがね!」というわけだ。だが現状、故障で出遅れている福谷よりも岡野の方がローテ入りに近い距離にいることは間違いない。ドラ3の岡野を意図的に外したのは明らかで、今日の好投は「俺を忘れるな!」という意地のようなものを感じずにはいられなかった。

 新聞をよく読むと、左端に「割って入る」との見出しで岡野のことにも少しだけ触れているのだが、割って入るどころか今や4番手の最有力に躍り出た。今年もいまいちだったナゴヤ球場ゲームだが、この好投が見られただけでもヨシとしよう。

木俣はようやっとる (@kimata23) | Twitter