ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

MENU

令和の次郎? 山下斐紹、勝利ほぼ確を呼び込む一発

〇5-1東京ヤクルト(オープン戦:バンテリンドーム名古屋)

「次の球をどう対処するかですよ」

 本日の放送で解説を務めた権藤博氏は、試合中に何回このフレーズを使っただろうか。主に鵜飼航丞、石川昂弥の若い二人が打席に立つたびに、一球ごとに打者心理とバッテリーの思惑を考察。結果よりもプロセスを重んじ、忖度なしで選手を評価する権藤解説を聞くと、いよいよ春の訪れを感じる。

 ちなみに石川に関しては直球、変化球共にしっかり対処できており、最後のファーストライナーも内容がよく「明日が楽しみ」と絶賛。また鵜飼の積極スイングにもやはり高評価を出していた。ファンが期待を寄せる若き大砲候補だが、ひとまず権藤御大のお眼鏡に適ったようで安堵した。他のOB解説者と異なり権藤さんは、期待株だろうが何だろうがダメだと思った時には「な~んでこれを振るのか分からんですよ」「ほらね、ベンチも首かしげてますよ」ってな具合に容赦なくぶった切るからだ。

 あまりの毒舌が時には賛否を巻き起こす権藤解説、今季も楽しませて頂きます!

目に見えぬ “長打の効力” のようなもの

 それはさておき、立浪ドラゴンズ初見参となった本日のバンテリンドームには公式戦さながらの2万人近いファンが集結。期待の高さが観客数にも顕著にあらわれた。変わったのは首脳陣だけではない。今年からバンテリンドームの人工芝が開場以来初となるストライプ仕様に模様替えし、まるで別球場のような見栄えになった。

 心機一転。さあ、あとはドラゴンズが勝てば最高のスタートだ。試合はお互い決め手を欠き、1-1の同点で迎えた6回裏に動いた。動かしたのは、またしてもルーキー鵜飼だった。2打席三振でも臆せずストライクを振りに行く積極性は大したもの。カウント2-2から外角高めの真っすぐを引き付けて捌くと、打球はグングン伸びてライトのフェンス上部を直撃。バンテリン名物 “あわやスタンドインのフェン直” の洗礼を浴びつつ、しっかりとチャンスメークに成功したのである。

 長打が正義なのは、得点効率のみならず雰囲気を一変させるという点にもある。味方は押せ押せムードになり、相手は必然的に得点圏に走者を背負い余裕がなくなる。3日のソフトバンク戦も鵜飼のフェン直ツーベースから打線が活発化したように、単打をコツコツと重ねるだけでは生まれ得ない、目に見えぬ “長打の効力” のようなものがある気がしてならない。

 それを更に強烈に実感させてくれたのが、7回裏に飛び出した山下斐紹の一発だ。移籍2年目の今季は捕手への未練を捨て、打撃に集中することを決意。立浪監督は就任前から山下の秘めたるパワーを見込んでおり、今季は犠飛など遠くに飛ばしたい場面で代打起用されるケースが増えそうだ。

 大歓声に包まれながらベースを一周した山下は、ベンチに戻ると「よっしゃー!」と雄たけびをあげながら満面の笑みでハイタッチに応じた。一瞬にしてベンチが明るくなったのはもちろんのこと、試合展開を楽にする意味でもこの本塁打は大きかった。昨季までなら2-1で終盤を迎え、胃をキリキリさせながら1点を死守する展開だっただろう。それが一振りで “勝利ほぼ確” を呼び込めるのだから、あらためて本塁打の威力はすさまじい。

 背番号39、パンチ力のある打撃、昭和パ・リーグっぽい無骨ながら愛嬌あるルックスといえば、左右の違いはあれど近鉄戦士の藤立次郎を思い出す。代打3打席連続本塁打の日本記録(タイ)を保持する職人も、晩年のわずかな期間ではあるがドラゴンズに在籍したこともあった。山下も藤立も、戦力外通告を受けた後の入団という共通点を持つ。

 かつて “切り札” とか “左殺し” なんて呼び名で恐れられた藤立のように、山下も新しい持ち場で大暴れするかもしれない。そんな期待を抱かずにはいられない一発だった。ちなみに今年は藤立が開幕戦で気迫の三塁打を放ってからちょうど20年にあたる。間違いなくあの試合もっとも盛り上がったシーン。覚えてる人、いる?

木俣はようやっとる (@kimata23) | Twitter