大人になれば分かってくることが色々とある。人生は思っているよりもずっと短いこと、綺麗ごとでは世界平和は実現しないこと、お金はとても大切だということ……。そして「努力は必ずしも報われない」というのも、大人になると思い知らされる真理の一つだ。
26日のオープン戦初戦を控え、立浪監督が指揮官としての初キャンプを「無事にこうやってこられたので100点」(サンスポ)と総括した。立浪監督が「100点」を出すのは秋季キャンプの総括、春季キャンプ初日に続いて3度目。ここまで大きな怪我人もなく厳しい練習を乗り越えたことに、手応えを感じているようだ。
一方で若手の突き上げに関しては明暗分かれた印象がある。非凡な打撃センスでサードのポジションをゲットした石川昂弥、一気に開幕レフトの有力候補に躍り出た鵜飼航丞、全てにおいて進化を感じさせた高橋宏斗らが代表的な「明」なら、殻を破れないまま一ヶ月間を過ごしてしまった根尾昂は「暗」に振り分けられるだろう。
だからこそ、キャンプのMVPを問われた立浪監督の口から「一番よく朝から練習していた根尾ですか。朝早くから頑張っていましたしね」と根尾の名前が飛び出したのには驚いた。
根尾は努力する。現状を打破するには、努力あるのみと言わんばかりに
スポ根漫画顔負けの早朝ハダシ特訓、立浪、森野、高橋由伸によるレジェンド3人衆付きっきり指導など、誰よりも話題をふりまき、そして朝から晩まで長く練習に励んだのは間違いなく根尾であろう。だが紅白戦、練習試合、二軍戦の計5試合で打率.111(18-2)と低迷。飛び出した一塁走者をライトから刺す強肩こそ披露したものの、肝心の打撃面では未だに目に見える結果がついてこない。
「全然悩んでないっす。もうすっからかんです」なんて嘯(うそぶ)いていたりもしたが、焦りがないわけがない。4年目ともなれば、高卒といえどもそろそろ結果を求められる段階。イチローは3年目に覚醒し、鈴木誠也も4年目に29本塁打と飛躍的に成績を伸ばした。高卒から一流選手に成長した野手の大半が4年目までにレギュラーを掴んでおり、根尾にとっても今季は “勝負の一年” になる。
あれだけ鳴り物入りで入団した金の卵も、3年間のハイライトが満塁本塁打たった1本では「期待はずれ」と言われても仕方がない。今年に懸ける想いが人一倍強いのは、当然のことだ。とはいえ根尾も人の子。周囲の期待と、それに対する現在地とのギャップに苦しんでいないと言ったら嘘になるだろう。
だから根尾は努力する。誰よりも早くグラウンドに来て、誰よりも遅くまで汗を流す。現状を打破するには、努力あるのみと言わんばかりに。
社会人になると、“大切なのはプロセスではなく結果だ” と言われるようになる。超実力主義のプロ野球界なら言わずもがな。だからこそ、立浪監督がMVPに根尾を指名し、その理由が “努力の量” だったのは意外だった。と同時に、努力するのが当たり前のプロ野球の世界において、指揮官にここまで言わせた根尾の凄まじい努力量たるや、想像さえもつかないほどだ。
冒頭にも書いたように、努力は必ずしも報われるものではない。根尾がこのまま大成せずに埋もれて行く未来も、4年目となるとさすがに覚悟しないといけないだろう。ただ、人並みの努力ではなく、“死ぬ気の努力” は何かしらの形で報われるのではと期待していたりもする。
立浪監督も現役時代は努力の人だった。小さい体で怪我に打ち勝ちながらレギュラーを守り抜くには、死ぬ気の努力もしていたに違いない。たとえ「甘い」と笑われようとも、あの立浪も認めた努力家のことを、今はまだ信じてみようと思う。
木俣はようやっとる (@kimata23) | Twitter
【参考資料】
CBCラジオ『ドラ魂キング』