ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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セカンド高橋、サード石川! 立浪監督のサプライズ起用宣言にミスター・ドラゴンズの意地を見た

 大きなニュースが飛び込んできた。あさって26日に予定されているオープン戦初戦の対阪神で、セカンド高橋周平、サード石川昂弥という布陣を敷くことを立浪監督が発表したというのだ(CBCラジオ『ドラ魂キング』より)。

 これは率直に言って驚いた。現状、両者を併用するには石川を慣れないセカンドで使うしか選択肢はなく、石川のサード起用に踏み切るのは、高橋が昨季のように不振に陥り、にっちもさっちも行かなくなった時だろうと。少なくとも私はそう考えていたからだ。

 石川を使いたい気持ちは山々ながら、高橋の実績と、10年選手のプライドを蔑ろにするわけにもいかない。多くの歴代監督が悩み、時には解任の要因にもなるジレンマを立浪監督がどう決着させるのか。これは今季の選手起用における最大の課題だったわけだが、まさかオープン戦初戦から最終手段と思われていた手を打ってくるとは……。

 あらためて立浪監督の肝っ玉が並大抵ではないことが証明された。と同時に、これが出来るのは星野仙一、落合博満という稀代の大監督ふたりの元で、自らが当事者として「奪う、奪われる」を経験した身だからこそだとも言えよう。

ミスター・ドラゴンズの意地のようなものがひしひしと伝わってくる

 新人時代、あの星野監督が宇野勝をコンバートしてまでルーキー立浪にポジションを空けたエピソードは今さら詳細を語るまでもない。その11年後にはルーキー福留孝介をショートで優先的に起用するために、前年活躍した久慈照嘉がセカンドに押し出される形となり、必然的に立浪との競争が勃発した。さらに落合監督の2006年には森野将彦との競争に敗れ、立浪は生き場所を代打に求める事になる。

 このように立浪は現役時代を通して競争の渦中に晒され続けた選手だった。奪う方の気持ちも、奪われる気持ちもイヤというほど理解している。ベテランに頼りきりでは機能不全を起こすという世代交代の宿命。そして若手の台頭によってチームが劇的に生まれ変わる瞬間を、立浪は身をもって体感してきたのだ。

 何としても石川昂弥を大成させなければ、ドラゴンズが上昇カーブを描く未来はあり得ない。その実現のために中村紀洋コーチを招聘し、練習試合でも一貫して4番に据える起用を続けた。一方で大島洋平、ビシエドといったレギュラー陣が北谷に合流し、いよいよ開幕に向けてチームは臨戦態勢に入る。だからと言って石川を「じゃあベンチで見ていて下さい」と外していたのでは、昨季までと何も変わらないではないか。

 26日の「セカンド高橋、サード石川」というサプライズ起用には、立浪監督の並々ならぬ決意を感じ取ることができる。必ずドラゴンズを強くするのだ、必ず生まれ変わるのだという、ミスター・ドラゴンズの意地のようなものがひしひしと伝わってくる。

 もちろん高橋とて黙って受け入れるほどお人好しではないだろう。ソースは失念したが、以前どこかで「セカンドは足を攣るからやりたくない」というような話をしていたのを覚えている。ただ、この2年間レギュラー安泰と言えるような成績を残したかと言えば、残念ながら答えはノーだ。打力が求められるサードというポジションで一桁本塁打に甘んじていては、こうした事態に直面するのもある意味当然ではある。

 悔しければ、打つしかない。打って取り返せばいいのだ。対して石川は、与えてもらったポジションを死ぬ気で守り抜く必要がある。高橋か、石川か。最後に笑うのは果たして?

 ホットコーナーをめぐる仁義なき戦いの火蓋が今、切って落とされた。

木俣はようやっとる (@kimata23) | Twitter