ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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2月17日発売『日本バッティングセンター考』は、歴史とドラマに溢れた熱い野球本だ!

 近所のバッティングセンターが今月いっぱいで閉業するという。店先の貼り紙によると、老朽化によるやむを得ずの決断であり、今後は建売住宅として生まれ変わるそうだ。何度か息子を連れて行ったこともあるし、町から金属バットの打球音と、独特の風情が失われるのは何とも言えず寂しい思いがする。

 大衆浴場と並び、バッティングセンターは昭和の名残をとどめる貴重な文化遺産であると思う。だが、意外なほどその「歴史」に想いを馳せる機会は少なく、また全国に点在するバッティングセンターを経営するのがどのような人達かなんて、考えたことさえも無かった。

 今月17日に双葉社より発刊となる『日本バッティングセンター考』は、おそらく日本初のバッティングセンターの史録であると共に、やはり初となる本格的なルポルタージュである。著者は『文春野球』の人気企画「中日ドラゴンズ どうでもいいニュース」でお馴染みのカルロス矢吹さん。ごく微力ながら私も「資料提供」という形で協力させて頂き、このたびひと足早く拝読させてもらった。

 北は釧路、南は石垣島、更にはタイ・バンコクに至るまで、著者自身が現地に足を運び、丹念な取材をもとに書かれた本書には、バッティングセンターに関わる人々の “野球” に対する熱い想いがこれでもかと詰まっている。錦糸町のシンボルでもある東京楽天地がバッティングセンター発祥の地だったという事実。株式会社キンキクレスコの、業界における半端ではない貢献。また斜陽業態となって久しい現在もなお、若い担い手達のエネルギッシュな意欲によって新たなバッティングセンターが全国に誕生しているなど、本書に出会わなければ知ることのなかった話ばかりで、学びの多い読書体験となった。

単なるバッティングセンター紀行に留まらず、その概史や人間ドラマにまで言及した一冊

 ドラゴンズ成分でいえば、日本で初めて練習にピッチングマシンを導入したのが中日であり、1954年の球団初の日本一はその成果の賜物であったというエピソードも、知らない人の方が多いのではないだろうか。本書ではこの件についても詳しく解説している。

 少年時代にバッティングセンターに行った事がないというプロ野球選手はおそらく一人もいないだろう。それにもかかわらず、選手の経歴のなかで出身校や出身クラブチームが注目されることはあっても、通ったバッティングセンターが話題になることは、これまでほとんど無かった(イチローでお馴染みの「空港バッティング」は別格として)。本書を読むと、これからは選手の成長譚を語る際には、「出身バッティングセンター」の取材も必要なのではと感じさせられた。

 単なるバッティングセンター紀行に留まらず、その概史や人間ドラマにまで言及した本書は、野球ファンならずとも必読の一冊である。読んだあとは、何枚かの100円玉とバットを握って打ちに行きたくなるに違いない。文句なしに、オススメです!

木俣はようやっとる (@kimata23) | Twitter