ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

MENU

【頼むよ福ちゃん】頂点を極めた羽生結弦の飽くなき挑戦

 絶えず挑戦を続けることの尊さに胸が熱くなった。フィギュアスケート・羽生結弦の話である。

 先日おこなわれたSPでは、先に滑った選手が付けた「穴」に足を取られる不運もあり、まさかの8位と厳しい発進となった。ここから大逆転3連覇を成し遂げるには今日のフリーで前人未到の超大技「クワッドアクセル」を世界で初めて決めるほか道はなく、その挑戦に注目が集まっていた。

 もちろん失敗すれば、その時点で金メダルはおろかメダル獲得自体が夢と散るため、無理せずに銀あるいは銅狙いに切り替えるという現実的な路線も残されてはいた。そりゃそうだ、何しろ練習を含めてこれまでの成功率0%。ほとんど無謀ともいえる挑戦を、よりによって五輪の舞台でおこなうなど、合理性の観点でみればあり得ない決断だ。

 ーー考えてみてほしい。日本シリーズ第7戦、3点ビハインドの9回裏1死満塁。打席には福田永将である。ホームランとは言わない。せめて犠飛か、なんなら三振でもいいくらいだ。とにかく当て損ないのゲッツーだけは叩いてくれるなよと、全国6千万人(推定)の中日ファンが祈るように見守る場面。いつにも増して緊張した面持ちでボックスに入った福田は、何を考えたのか唐突にこう決意するのだ。

「大型ビジョンの更に上にそびえるCBCの大看板。オレは今から大ホームランを打ち、必ずあそこに当てる。日本一より大事なものを、オレが見せてやる!」

 難攻不落の大看板に当てれば賞金5千万円が贈呈されるというルールがある。あのアレックス・カブレラでさえも叶わなかった、不可能とされる無理難題。その偉業に挑むことを、福田は、福田永将は……よりにもよってこの大舞台で固く誓ったのである。

 この決意にファンが気づいたとき、一斉にツッコミが入るに違いない。

「頼むからやめて! まん振りからのボテボテ遊ゴロしか見えないよ! てか福ちゃん、そもそも金メダリストじゃないし、普段のチャンスでも犠飛すら打てないくせにー!

と、まあ羽生がやろうとしたのはこんな感じの事だ

ぜってーちがう

青ゴジラが必要になる時が、必ず来る

 冗談はさておき、頂点を極めたアスリートの飽くなき挑戦ほど美しいものは無い。恐れることなく果敢に挑んだ羽生の姿勢は、記録にこそ残らねど、人々の記憶の中に永遠に刻まれるだろう。

 ちなみに手術からの復帰を目指す福田は、バットを立てるフォームに戻し、フリー打撃で場外弾を連発したという頼もしいニュースも先日、伝わってきた。開幕こそ間に合うかは微妙だが、状態さえよければすぐにでもレフト争いに割って入れるだけの力は持った選手である。

 今や長距離砲といえば、鵜飼航丞や石川昂弥にすっかりお株を奪われた感もある。だがベテランとはいえ33歳。まだ老け込むには早すぎる年齢だ。かつて堂上直倫、平田良介と共に竜の希望を担った “青ゴジラ”。その存在が必要になるときが、必ずや訪れるはずだ。

 なお羽生結弦が跳んだクワッドアクセルは、完全な形ではなかったものの、ISU公認大会で世界で初めて4回転半ジャンプとして認定されたとのこと。やっぱりスゲェよ、羽生くん。

木俣はようやっとる (@kimata23) | Twitter