ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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決めろ、ジャイアントキリング!石川昂弥の描く放物線が天敵菅野を打ち砕く!?

 元中日の近藤真市さんが、岐阜聖徳学園大野球部の新監督に就任したというニュースが伝わってきた。

 長くドラゴンズに尽力した近藤氏は人格者としても知られる。引退後にスコアラー、コーチ、スカウトを歴任した豊富な経験だけでなく、きっとそうした面も評価されてのオファーだったのだろうと想像できる。

 今回近藤さんが就任する岐阜聖徳学園大野球部のスローガンは「ジャイアントキリング」ーーすなわち格上の相手から勝利をもぎ取る「大物食い」をモットーとし、日本一を目指す途上にある。昨年同チームは19年ぶりに東海大会を制し、全国の舞台でも強豪富士大を相手に善戦した。更なる飛躍を遂げるべく、近藤さんに白羽の矢が立ったというわけだ。

 2020年より東大野球部の監督に就任した井手峻さんや、日体大で投手コーチを務める辻孟彦さんもそうだが、かつての竜戦士の活躍がアマ球界から聞こえてくるのは、とても嬉しいし、誇らしいことだ。果たして近藤 “監督” がどのような新風を吹かせるのか。今年は岐阜聖徳学園大の動向にも注目してみたい。

「開幕戦でホームランを打つイメージが浮かんできた」

 近藤さんといえば、プロ野球の長い歴史でも二度とは起こらないであろう大快挙「新人投手によるデビュー戦ノーヒットノーラン」の張本人としてあまりにも有名である。1987年より遡ること8年、1979年に刊行された村上春樹のデビュー小説『風の歌を聴け』にこんな一節がある。

「新人投手がジャイアンツを相手にノーヒット・ノーランをやるよりは簡単だけど、完封するよりは少し難しい程度」

 厄介な病気に罹った女性が、その完治率を説明する際にこの比喩を使うのだが、要するにそれだけ「まさかあり得ない」事だと思われていたわけだ。その「まさか」を成し遂げた人物こそが近藤真市であり、執筆から数年後に実現してしまうとはさすがの村上春樹も予期していなかったに違いない。

 世界の王貞治が率い、原辰徳、クロマティ、吉村禎章ら錚々たるメンバーが名を連ねる当時の巨人は、泣く子も黙る球界の盟主である。その巨人を相手に、数ヶ月前まで学ランの高校生だった新人がバッタバッタと凡打の山を築き、フィニッシュは職人・篠塚和典をあざ笑うかのように肩口からのカーブで斬っての大記録達成。まさしく球史最大の「ジャイアントキリング」が決まった瞬間だった。

 翻って現在の中日は、最下位候補の筆頭として日々、他球団ファンからの誹り罵りに晒されている状況にある。おそらく今後出てくる評論家の順位予想でもことごとくBクラスないし最下位に記入される事だろう。悔しいけれどそれが現実。補強ポイントの外国人獲得をスルーしてしまった以上、自業自得と受け止めなければいけないのも確かである。

 ただ、一方で若手野手の覚醒がかつてないほどに期待できるシーズンでもある。中でも石川昂弥に関しては、まだ一軍で未本塁打にもかかわらず、まるで毎年30本打っているスラッガーであるかのような過剰な期待を寄せられていて、少し気の毒なほどだ。

 その石川が本日おこなわれたシート打撃に登場。変則フォームのマルクの直球を捉えた当たりは高々と舞い上がり、そのままグングンと伸びながら降下。向かい風の影響で惜しくもスタンドインとはならなかったものの、バンテリンと同じ中堅122メートルを誇るAgreスタジアム北谷に描いた放物線には、否応なく夢を膨らませずにはいられなかった。

 開幕カードを戦う巨人はまず間違いなく菅野智之が初戦のマウンドに立つだろう。これまで幾度となく苦杯をなめてきた天敵である。その菅野を、「開幕でホームランを打つイメージが浮かんできた」と豪語する石川が打ち砕くような事があれば、それはまさに「ジャイアントキリング」と呼ぶにふさわしいものではないか。

「弱いチームが強い奴らをやっつける 勝負事においてこんな楽しいこと他にあるかよ」(ツジトモ『GIANT KILLING』2巻より)

 楽しい開幕戦になりそうで、今から待ち遠しい。

木俣はようやっとる (@kimata23) | Twitter

【参考資料】

【硬式野球部】19年ぶりに手にした、全国への切符。 | 岐阜聖徳学園大学WEBマガジンYAWARAGI

【サンデードラゴンズ延長戦】石川昂弥選手を質問攻め!鈴木誠也選手のすごいところは?立浪監督の印象は?中村紀洋コーチを「ノリさん」と呼ぶのは本人公認!?【サンドラ】 - YouTube

村上春樹『風の歌を聴け』講談社,1979