ちうにちを考える

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スーパースター訪問!小笠原は松坂大輔を “神様” と呼ぶ

 第2クール2日目、北谷球場に大物ゲストが来訪した。見慣れないスーツ姿にマスクを付けていても、その人懐っこい目元を見れば一目瞭然。ご存じ「平成の怪物」こと松坂大輔である。

 昨年限りで引退し、評論家として新たなスタートを切った松坂は、所属するスポニチ、テレ朝「報道ステーション」の取材で各球団のキャンプ地を精力的に視察している。その6球団目に訪れたのが古巣・ドラゴンズがキャンプを張る北谷だった。

 松坂がグラウンドに姿を現すと、次々と選手が挨拶に出向く様子がキャンプ中継や各報道機関のSNS等を通じて伝わってきた。一様に緊張というよりは笑顔で「先輩」の来訪に接しているあたりに松坂という人物の人柄が表れている。

 部活動において最も面倒なイベントの一つが、放課後や土日にふらりとやって来るOBへの応対諸々である。しかし松坂と接する選手達の表情には我々がしてきたような「うざいOB」に対する愛想笑いといった色合いは皆無で、みんな心から久々の再会に感激し、歓迎している様子が印象的だった。やはり松坂大輔は誰からも尊敬され、慕われる規格外のスーパースターなのだ。

 わずか2年という短い在籍ながら、松坂がドラゴンズに遺した功績は計り知れないものがある。入団時に巻き起こった激しい反発意見をシャットアウトするかのように、いきなり6勝をマークした復活劇の衝撃はさる事ながら、異例のグッズ売上での貢献、そして後輩達へ与えた好影響はその後、本人達の口から度々語られてきた。

 中でも松坂の存在を “神様” とまで呼び、信仰に近いレベルで敬意を表するのが柳裕也、小笠原慎之介の二人だ。以下の鉤括弧内はすべて『Sports Graphic Number 1039号 松坂大輔 平成の怪物のすべて。』(文藝春秋)掲載記事からの引用となる。

「僕は松坂さんの球を一番多く受けたという自負ですね」

 柳は宮崎出身ながら松坂への憧れから横浜高に進学したほどのガチファン。「2年間だけだったけど、一番ごはんに連れていってもらえたのは俺だという自負がある」と誰よりも身近な距離感で薫陶を受けた。一方で小笠原は「柳さんが食事なら、僕は松坂さんの球を一番多く受けたという自負ですね」と、まるで女子を取り合う中学生のように “松坂自慢” を張り合う。

 しかし2人共に松坂が入団した2018年時点では大した実績もなく、いわば松坂は雲の上の存在。それでも語るに尽きぬほどの思い出があるわけだから、誰とでも分け隔てなく接する松坂のフラットな性格がここでも垣間見えてくる。

 直系の後輩にあたる柳は松坂在籍2年目の2019年に自身初の二桁勝利をあげるなど一気にブレーク。「打線の援護が無い時に、思わず『こんな時はどうしてたんですか?』って聞いちゃったことがある。『俺も若い頃はいらついたこともあったけど、修行だと思って頑張れ』って励まされた」と、メンタル面でのアドバイスも受けていたようだ。

 また小笠原は「軸の近くで腕を振る方がいい」「真っ直ぐと同じようにカーブを投げろ」といった松坂から授かった金言を忠実に実践し、遂に昨年は自身初となる規定イニング到達を果たした。大野雄大、柳に次ぐ三本柱の一角として今季は更なる飛躍が期待されるが、「本当に質問してばかりだったなあ」と振り返る “神様” との2年間がなければ、その境遇も今ごろ違ったものになっていただろう。

 今や押しも押されもせぬ右のエースに成長した柳。対して小笠原は今季がキャリアにおいて非常に重要な一年になる。敬愛する松坂の訪問は、来るべき開幕に向けて大いに刺激になったに違いない。

 夏の甲子園の優勝投手、ドラフト1位という共通点はあるものの、入団6年目までの通算勝利数は松坂77勝に対して小笠原24勝と天と地との差がある。ここから最終的な通算勝利170勝(日米合算)にどこまで近づくことができるか。まだ24歳、追いつけ追い越せは決して不可能ではない。

木俣はようやっとる (@kimata23) | Twitter

【参考資料】

『Sports Graphic Number 1039号 松坂大輔 平成の怪物のすべて。』(文藝春秋)

「[我こそ松坂チルドレン]柳裕也×小笠原慎之介「球場に行けば、“神様”がいる幸せ」