ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

MENU

「僕ら来年優勝するんで」 キーマンは柳裕也

 2日続けてM-1の話になるが、今大会でとても胸が熱くなったシーンがある。それは漫才ではなく、トークでのやり取りだった。

 決勝10組目に登場した “もも” というコンビ。「ノーガードしゃべくり乱打戦」の煽り文句が示すとおり、相方の容姿を交互にいじり合いながらボケとツッコミが激しく入れ替わる漫才で、基本的には「なんでやねん、○○顔やろ」の一辺倒ながら、ワードセンスに光るものがあり、飽きずに楽しむことができた。惜しくも最終決戦進出こそならなかったが、初出場にして確かな爪痕を残せたのではないだろうか。

 だが、問題はこのあとだ。審査員からも将来を嘱望する声が相次ぎ、最後に松本人志が「3年後優勝顔やね」とネタの内容に絡めたコメントを出したときのこと。神様のような存在にこんな事を言われたら、普通は平身低頭するか、気の利いたボケをかまそうとして滑り倒すかのどちらかだが、金髪にヒゲという強面の “まもる” は、自信に満ちた表情でこう言ってのけたのだ。

「でも、僕ら来年優勝するんで」

 松本の振りに対して笑いを取りに行かず、ど直球で言い返したのは、たぶん漫才師としては減点なのだろう。ただ、怖いもの知らずの青くさいまでの純情は、ほとばしる青春の一コマを見ているようでグッとくるものがあった。

 3年後なんて言わせない。来年優勝するのだ。こんなセリフを立浪監督の口からも聞いてみてえなあ。というわけで、話題をドラゴンズに移す。

キーマンは柳裕也

「まず来年は基礎を作る。3年目には必ず結果を出す」と3年計画を語るのは立浪監督だ。それはそれで構わないが、3年前には与田前監督も同じ事を言っていたように思うのは気のせいだろうか。なんならその前の森繁和監督も「自分の役目は次の人にうまく繋げること」とか言っていたような……。

 エンドレスに訪れない「3年後」に、今度こそケリがつくのを期待したいところだが、そのために絶対不可欠な要素がエースの活躍。すなわち柳裕也が今以上の投手に成長し、大黒柱としてチームを引っ張っていく存在になってもらう必要がある。

 思えば2010年代半ばの暗黒真っ只中に、低迷の要因について議論するとき、ファンの間でも評論家の間でも概ね共通していたのが、「正捕手不在」と「エース不在」、要するに軸となるバッテリーの不在こそが中日を低迷たらしめているのだという認識だった。言い換えればチームが強い時期には必ず確固たるバッテリーがいて、ドラゴンズでいえば川上憲伸、吉見一起と谷繁元信の関係がまさにそれにあたる。

 その谷繁が引退し、吉見も怪我でかつての輝きは失われてしまった。まだ大野雄大が覚醒前だった事もあり、この時期にはとにかく「エースと正捕手の確立」こそが低迷脱出の条件だと声高に叫ばれていたものだ。

 さて、当時にしてみれば今はまさに念願叶ったりの状況ではないか。何しろ沢村賞投手の大野がいて、正捕手の座には球界屈指の能力を持つ木下拓哉がどっかり腰を据えている。さらに柳は二冠を達成し、もし来年もドラゴンズ勢が最優秀防御率を取れば、同一球団による4年連続の占有はプロ野球史上初の快挙になるのだという。

 あとは打つ方さえ平均に近づければ、案外優勝も夢物語でもないんじゃないかとさえ思えてくる。能天気すぎると叱られるかも知れないが、私は元来楽天家なのだ。もちろん順位予想では一番上に真っ先に「中日」と記すつもりである。

 ただ、そのためには柳が今以上に絶対的な存在になってもらわなければならない。今年の二冠は見事だったが、四冠を懸けて臨んだ最終マウンドではあっけなくKOを食らうなど、抜群の信頼を寄せるにはまだ一歩足りないのも事実。

「今日は柳だから負け」だと、試合前から相手のファンが諦めるようになって初めてエースというのが私の持論。晴れて1億円プレーヤーの仲間入りを果たし、来季は真価を問われるシーズンになるだろう。その輝きが強ければ強いほどドラゴンズの優勝は近づくはず。3年後優勝? いやいや、僕ら来年優勝するんで。

(木俣はようやっとる)