ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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なるか⁉︎ 大台到達! 柳の契約更改をガチ予想

「プロ野球の世界は夢がある。同時に、厳しい世界でもある。それを知ってほしいという思いがあるんです。給料が下がった時には、自分への戒めにできる」

ソフトバンク・高橋礼の言葉である。通常、プロ野球選手の年俸は取材をもとにはじき出した「推定額」が各メディアで報じられるが、高橋礼に限っては「僕は10万円単位まで本当の数字を言うようにして」いるそうだ。

www.tokyo-sports.co.jp

 毎年オフになると、選手たちの悲喜こもごもが紙面を賑わすようになる。特にクリスマスの近いこの時期は、各球団の “顔” ともいえるスター選手たちが登場し、そこで動く莫大な金額は時としてスポーツニュースの域を超え、世間の耳目を集めることになる。

 ただ、「給与」という究極の個人情報がこれほど大っぴらに公表されることに対する疑問の声が、少なからずあるのも事実だ。長者番付の公表もとうの昔に廃止になり、選手名鑑から家族の名前が載らなくなってもう15年以上経つ。言うまでもなく個人情報保護はコンプライアンスの基本中の基本だ。

 それなのにプロ野球選手の年俸だけがエンタメの一環として消費され続けるのは、確かに違和感がある。いずれこの文化も滅びる日が来るのだろうか? しかし意外にも当事者である選手から公表に反対する声は上がっておらず、中には高橋礼や、楽天のエース・則本昂大のように「夢を与える職業」という側面から肯定している選手もいる。

 メディア的にも契約更改は話題に乏しいこの時期の貴重なコンテンツであるため、世の中のコンプライアンスに対する価値観によほど変化がない限りは、今後もこの文化は続いていくのではと私はにらんでいる。

 ちなみに選手の年俸が大きなニュースとして取り扱われるようになったのは「1974年の王貞治」が起点だとする説が散見されるが、それよりずっと前から契約更改はオフの華として機能しており、その歴史を牽引したのが “国鉄の天皇” こと金田正一であった事が、私のおこなった研究であきらかになっている。

 契約更改の沿革はこちらにまとめたので、関心のある方はご参考にして頂きたい。

plus.chunichi.co.jp

 

柳の大台到達可能性を過去の事例から予測してみる

 中日の契約更改は、落合博満氏がGMに就任した2013年から他球団に比べて半月ほど早いペースで行われるのが慣例となっている。一時期は11月中に全選手の更改が完了するほどのハイペースだったが、さすがにメディア側から泣きが入ったのか、近年は一部主力選手に関しては12月下旬まで引っ張るようになった。

 昨年の大トリは12月22日に更改をおこなった京田陽太と大野雄大。今年はその京田が既に14日に済ませており、未更改は投手二冠に輝いた柳裕也を残すのみとなっている。現在の4,100万円(推定)から大幅アップは間違いなし。焦点は、どこまで上がるのかという一点に絞られる。

 5年目の今季は自己最多タイの11勝をマークし、防御率2.20、168奪三振はいずれもリーグ最高の数字。球団ではあの杉下茂以来となる投手四冠の可能性をシーズン終盤まで残すなど、圧倒的な投球でセ・リーグを牛耳った。歴史的な貧打に泣かされたチームにあっての成績であることを加味すれば、額面以上の評価は与えられて然るべきだろう。

 そうなると浮かんでくるのは「1億円」の大台だが、果たして2.5倍近い大幅アップに緊縮財政の中日が踏み切れるかどうか。もし大台到達ならずとなれば、例によって各方面から「シブチンだ」「身売りだ」と叩かれる事になりそうなので、ファンのメンタル的にもできればここは気持ちよく払うものを払って欲しいところだ。

 しかし過去に同程度の成績を残した投手の事例をみても、大台到達は極めて微妙なラインと言わざるを得ない。

 たとえば2007年の中田賢一はこのシーズン、28登板14勝8敗、170.1回177奪三振、防御率3.59という柳に負けず劣らずの好成績を残し、CSで2勝、日本シリーズでも1勝を挙げるなど53年ぶりの日本一に大きく貢献したが、年俸は4,100万円→8,500万円とほぼ倍増に留まった。

 2006年の朝倉健太25登板13勝6敗、154.2回、防御率2.79と、エース川上に次ぐ勝ち頭として、球団史上最強の呼び声高い黄金期のチームで活躍したが、年俸は3,000万円→7,000万円と大台には遠く届かない金額でサインしている。

 例外だったのは、その川上憲伸である。1年目にいきなり14勝を挙げた川上だが、その後は故障にも泣かされて低迷。輝きを取り戻したのは、今季の柳と同じ5年目の2002年だった。当時まだ日本球界ではめずらしかったカットボールを習得した川上は、27登板12勝6敗、187.2回149奪三振、防御率2.35という成績でエースの座に返り咲きを果たした。巨人戦でのノーヒットノーランという印象的な活躍もプラスに働いたのか、年俸は5,300万円→1億1,000万円と一気に大台突破した。

プロ野球選手は夢を与える職業だ

 当時よりも悪化している球団の財政状況を考慮すると、現在4,100万円の柳が1億に到達する見込みは残念ながら低いと言えるだろう。あくまで私の予想だが、3,900万円アップの8,000万円で渋々サイン。SNSは大荒れと予想するが、もちろんハズれるに越したことはない。

 ただし二冠に加え、チームの投手では10年ぶりとなるベストナインに選出された点がどこまで査定に組み込まれるのか。また高額プレイヤーが多数在籍した2000年代とは違い、今の中日で大台を超えている日本人選手は大野雄大、大島洋平、そして祖父江大輔の3名のみという状況から、スターを輩出したい思惑で1億円に乗せてくる可能性も無くはない。

 いずれにせよ、答えは来週のうちに出るはずだ。プロ野球選手が夢を与える職業であることを証明するような金額を、ぜひ提示して欲しいところだ。

(木俣はようやっとる)