早いもので12月。とはいえ、年々この時期特有のワクワク感が希薄になっているように思えてならない。
いわゆる年の瀬の風情のようなものは随分前から消え始めているし、近年じゃ恋愛至上主義が流行らなくなったこともあり、あの悲喜こもごものクリスマスでさえも以前ほどの盛り上がりは感じられなくなっている。
年賀状だって、もう出すのをやめて何年経つだろう。それに温暖化だかなんだか知らないが、今年は気候も穏やかだ。あと3週間足らずで『Mステスーパーライブ』だと聞いても全然ピンと来ないし、現状まったく「冬」「暮れ」という心地がしない。
「開幕戦は130分の1です」とはドン川上哲治の言葉だが、日本社会における師走も段々と特別なものではなく、「12分の1」の存在になってきているようだ。
ただ、今年に関しては「冬」を感じないのは他にも理由がある気がしてならない。それを象徴するのが中日ファンの異様なテンションの低さである。
年末くらい夢を見せてくれるのが親会社ってもんだろう?
例年であればストーブリーグにキャッキャしているはずのこの時期。もっともドラゴンズについては数年前よりFA補強を実質的にあきらめており、札束飛び交う他球団の景況に比べれば明るい話題が少ないのは事実だ。
ただ、それでも外国人に関しては毎年必ず一人は獲得してきたし、コロナ禍に見舞われた去年でさえ12月2日にガーバーとロサリオの獲得を大本営・中日スポーツが一面で報じていた。それが今年は未だに音沙汰なしでは、重苦しいムードが漂うのも無理はない。
かたや他球団では、やれMLB通算109発大砲だとか、ヤ軍有望株の巨漢スラッガーだとか派手な肩書が乱れ飛んでいる状況において、中日に関する外国人情報がサンスポの出したブリトー獲得調査の記事だけというのは不安に苛まれても致し方ないだろう。
オフの出足は悪くなかった。むしろ快調だった。待望の立浪政権一年目とあって、契約更改ではめずらしく球団が奮発し、シーズン5位にもかかわらず “暖冬” といえる査定で連日ホクホク顔の選手たちを拝むことができた。
またビシエド、ライデルという投打の両看板の流出を早々に阻止し、田島慎二、祖父江大輔のFA問題も早期決着。秋季キャンプではノリさんの指導のもと、京田陽太が「今までよくこれで僕、打てましたよね」と打撃開眼を示唆すれば、石川昂弥はナゴヤ球場で場外弾を連発という規格外のパワーを披露するなど、11月はとにかく明るい話題が尽きないひと月だった。
そうなりゃ、あとは新外国人を連れてくるだけだ! 新外国人さえ決まってくれりゃドラの優勝は間違いにゃ〜て! とファンは息巻いた。11月7日には愛知県歯科医師会主催のトークショーに出席した立浪監督が、来季の20本塁打を期待する選手として「ビシエド、周平そのあたり。あと(これから獲得する)新しい外国人も含めて」と、長距離砲獲得の意志をはっきりと示していたのである。
しかし……あれから1か月弱。大本営は新外国人の「し」の字も報じず、どう見ても長距離砲ではないブリトーのバッティング映像にガーバーの姿を重ね合わせては悲嘆に暮れるという、不健全な生活をファンは余儀なくされている。そもそもブリトーだって本当に来るのかどうかはよく分からない。
かつてドラゴンズの12月といえば、「世紀のトレード」落合博満、韓国のイチロー・李鍾範、2年連続HRキング・T.ウッズなど、超大型補強のクリスマスプレゼントに歓喜したものである。栄枯盛衰。中日にお金がないのは誰もが知っている。だけど年末くらい夢を見せてくれるのが親会社ってもんだろう?
日本ハム・新庄剛志ビッグボスは言う。
たった今北海道日本ハムファイターズの監督に就任する事が決まりました。
— 新庄剛志 (@shinjo_freedom) 2021年10月29日
プロ野球の存在意義は
そこの街に住む人達の暮らしが少しだけ彩られたり、
単調な生活を少しだけ豊かにする事に他なりません
その裏側に誰を笑顔にするのかを常に心に秘めて
新庄剛志らしく突き進んで生きます!
近年のドラゴンズは、豊かになるどころか貧しい気持ちになる一方だ。
世間の風の冷たさに、こみあげる涙、苦しみに耐える、中日ファンは枯れすすき。
(木俣はようやっとる)
【参考・引用】
・『中日スポーツ』
・『昭和枯れすすき』/さくらと一郎(1974)