ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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Break it down

●1-6阪神(24回戦)

 敵地・甲子園で迎えた5日ぶりの試合は完敗。相手先発の高橋遥人に制圧され、代わった後に岡林勇希のタイムリーで1点を返すのがやっと。投手陣も被安打11の6失点と、振るわなかった。シーズン残り試合はあと「3」である。

心の中は「タイトル総ナメ」

「ここまで来たら頑張りたいですし、まず明日(21日)投げないと始まらないです。調整はしっかり、特別なことはしていません。準備できたと思います」

 柳裕也がここにきて初めて個人タイトルへの想いを吐露した。

 チームはクライマックスシリーズ進出を逃し、話題は次期首脳陣のことばかり。さすがにもう言ってもいいだろう、という気持ちが言葉の端々から伝わってきた。明るい話題の少ないシーズンにおいて、柳の熱投はドラゴンズファンの溜飲を下げるものだった。

 奪三振と防御率のタイトルは、ほぼ手中に収めた。あとは21日、そして中4日で26日の試合に臨み、ともに勝利投手になる。そうすれば最多勝と最多勝率のタイトルも手にし、「4冠」に輝く――。

 柳も、我々も、心の中はタイトルを総ナメすることでいっぱいだった。

まさかの2回4失点KO

 上記コメントが載る記事が配信されてから約半日後、柳は「悔しいです」の5文字を残して、甲子園のマウンドから降りていた。まさかの、2回4失点KO。2回で降板するのは今季最短である。誰がこの結末を予想できたか。

 初回いきなり先制されても、最少失点でしのいだ。二塁を守る石垣雅海のまずい守備もあった。だが、立ち上がりからボール先行の投球が続いて球数がかさみ、先頭打者の出塁を許し、チャンスを拡げられ、失点を喫する。これではなかなか厳しい。

 残念ながら、2戦2勝しないと最多勝&最高勝率には届かない。指揮官は「もう一度、全て確認をしてから決めます」と明言を避けたが、おそらく柳の2021年は本日をもって終了する。

2年前と数字は似ているが……

 26試合に登板、172回を投げて11勝6敗。168奪三振、与四球40、防御率2.20。今夜を終えての柳の成績である。

 26試合に登板、170回1/3を投げて11勝7敗。146奪三振、与四球38、防御率3.53。こちらは初の2ケタ勝利を挙げた2019年の成績だ。数字を並べてみると、似ていることに気づく。

 ただ、2年前と比べて、奪三振数と防御率は大きく上回っている。優秀な投手を示す「K/BB(奪三振数/与四球数)」や「WHIP((与四球 + 被安打) ÷ 投球回)」も良化し、「QS率(先発して6回以上3自責点以内の回数/先発登板数)」が上がっている。

 後半戦は、今夜負けるまで4勝負けなし。QSを逃したのはわずか1度で、逃した試合も6回途中まで登板と、安定感は年間通じて続いた。一つまた殻を破り、キャリアハイのシーズンを送ったと言って良い。

「2冠」獲得でも素晴らしい

 今季の柳は、印象的なマウンドも多かった。何度「宝石のような柳裕也!」とつぶやいただろうか。

 自己最多の14奪三振で初勝利をつかんだ4月17日の広島戦。被安打1の「スミ1完封」を成し遂げた6月1日のロッテ戦。147球の熱投で2度目の完封勝利を挙げた8月20日の阪神戦……。記録には入らないが、オールスター先発投手の栄誉にも輝いた。

 決して速い球があるわけではない。飛び抜けた変化球があるわけでもない。それでも、粘りに粘ってマウンドに立ち続けた。バリエーション豊かな配球で打者を牛耳った。「9人目の野手」としてフィールディングを滞りなく行い、時にはバットでもチームを鼓舞した。

「4冠」は無理だったけれど、「2冠」でも素晴らしいじゃないか。今夜KOされたからって、背番号17を責めるファンはいない。「よく1年間投げぬいた、お疲れさま」と労いたいと思う。(ikki)

 

本人・監督コメント引用:「中日スポーツ」「スポーツ報知」
参考:「スポーツナビ」