ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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FIELD OF VIEW

○5-3ヤクルト(25回戦)

「根尾昂、一軍昇格」

 正に青天の霹靂だった。しかも与田監督はショートでの起用を示唆している。いくらBクラスが決定しているとはいえ、京田陽太をレギュラーから外す必要はあるのか。しかもフェニックスリーグからわざわざ連れ戻してまで起用することに価値はあるのか。どことなく煮え切らないまま、本日の試合開始を迎えようとしていた。

ラストチャンス

「1番 ショート 根尾」

 神宮球場のウグイス嬢は確かにそう読み上げた。飛騨の怪童を初めて目にしてから6年と少々。このアナウンスを耳にする日を心待ちにしていたものの、いざその時が来ると思いのほか消化不良だった。

 直前のフェニックスリーグでの外野起用から一転、突如一軍でショートを守る意味は何か。ファームで文句なしの結果を残しているとは言い難いだけに、首脳陣の意図を推測することは困難を極めた。

 ただ、断言できるのは背番号7にとって絶好の舞台が用意されたということ。今シーズンは悲願の開幕スタメンを奪取したものの、レギュラーと呼ぶには程遠い数字に終始した。

 5月4日にプロ入り初本塁打を放って以降は尻すぼみとなり、五輪開催に伴う中断を機に二軍行き。その間に渡辺勝や土田龍空、岡林勇希が一軍で見せ場を作り、かつてのゴールデンルーキーの影が薄くなってしまった。

 更にその流れに拍車をかけたのが先日のドラフト会議だ。ドラフト1位のブライト健太を筆頭に野手を大量指名。京田との定位置争いに敗れたにもかかわらず、外野手として出場機会が転がり込んだ春先のようなことは金輪際ないはずだ。

 このタイミングでの一軍抜擢は根尾に「与えられた」最後の出場機会と断言しても良い。特別扱いが許される試用期間の終焉が訪れた瞬間だった。

分岐点

 本日の打撃成績は5打数1安打1打点。7月12日以来の打点は、チームにとって貴重な同点タイムリーとなった。しかしながら、その直後に見せたボーンヘッドは積み上げた信頼を無にしかねないもの。

 岡林が放った一塁線強襲の打球に対する二塁付近での一時停止は、許されるプレーではない。この日はコーチからのお小言で済んだとしても、来シーズンは二軍降格を告げられてもおかしくない。もっと言えば、プロ野球生活を左右しかねない重大なものだ。

 今シーズンのドラゴンズにとっては、消化試合のワンシーンに過ぎないかもしれない。しかし未来を見据えると、単なる1試合で終わらせるわけにはいかないのだ。

 2018年10月25日。就任直後の与田監督がクジを引き当てた瞬間、ドラゴンズは2020年代の球団の浮沈を一人の少年に委ねた。目力の強い少年が「ホンモノ」になるか否か。運命の分かれ道を目の前にしている状況といっても過言ではない。

 残りはあと4試合。来季に向けて飛躍のきっかけにするのか、強いこだわりを見せるショートとの決別になるのか。その結果は神のみぞ知るところだ。分かっていることは只一つ。プロ野球選手としてのキャリアを切り拓き、景色を変えるのは自身のプレー以外にない。それだけだ。

(k-yad)