ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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希望の光だ、ブライト健太! 超野手偏重ドラフトを考える

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◇11日 プロ野球ドラフト会議

 当初の予定通り、中日は上武大のスラッガー・ブライト健太を1位指名した。今朝の中スポ一面は『ブライト 竜に行きたい』の見出し。ほぼ本決まりにも思えたが、米村チーフスカウトの「投手、野手どちらに行くかも決まっていません」とのコメントも載っており、蓋を開けてみるまで分からない情勢だった。

 しかし会場に響き渡る低音ボイスが読み上げたのは、「アドゥ ブライト 健太」の名前だった。投手が豊作といわれる今回のドラフトで、敢えての野手指名は賛否が割れるかも知れない。

 実は私自身も、どちらかといえば「否」寄りの立場だった。4年春の活躍で一躍名乗りを挙げたものの、それまで無名だったという実績の乏しさ、上武大からプロで大成したスラッガーが見当たらない事ーー。そうした懸念は、今朝の中スポでたちまち氷解した。

「こんなこと言って良いのかわかんないですけど、中日に行きたいです」。地元番組でのリップサービスならいざ知らず、囲み取材での発言だというから本音と見ていいだろう。

 またその理由をブライトは「スカウトの方もすごい見に来てくださいましたし、球団のYouTubeでキャンプのときに、福留さんがバッティングを教えていたのを見たりすると、自分も教わりたいなという気持ちが強いですし、そういう面でもすごい行きたいです」と語ったという。

 嬉しいではないか。近年あまりいい話題のないドラゴンズに、未来ある若者が「行きたい」と言ってくれているのだ。それも足繁く通ったスカウトへの感謝を理由に挙げる健気さ。これに応えなければ男じゃない。竜の未来を照らす希望の光、ブライト健太。バンテリンドームを縦横無尽に駆け回る姿が、今から目に浮かぶようである。

2位も外野手、駒澤大・鵜飼

 ブライトを一本釣りできたところで一安心しつつ、智略を尽くさなければならないのはむしろ2位以降だ。特に中日にとって、全体15番目の候補選手を獲得できる2巡目は重要である。

 事前予測では中日以外の11球団が投手を1位指名するのではとも言われていたが、実際にはそうはならなかった。これにより佐藤隼輔、廣畑敦也、赤星優志といった投手の有力候補、さらに正木智也ら1位級の選手が多数残っている状況での指名となった。宝の山から好きに選べるなかで、一体誰を指名するのか。ここで中日が選んだのは、駒澤大・鵜飼航丞だった。

 豪快な一発が魅力の右の大砲。投手豊作と言われる今ドラフトで、数少ない野手のBIG3に数えられる選手をダブルで掻っさらう指名には、明確な現場・フロントの意志を感じる。それも長打力特化型の鵜飼は、これまで中日が最も指名を敬遠してきたタイプの打者だ。

 その後も3位に火の国サラマンダーズの155キロ左腕・石森大誠を指名しただけで、あとは6位まで全て野手、うち3人が右の大卒外野手という偏重したドラフトとなった。編成破壊にも見える極端さだが、それだけ球団が今季の貧打を深刻に捉えている裏付けでもある。同世代の外野手を3人獲得という異例の体制は、同時に現有選手への発破の意味合いもありそうだ。

 特に3年前のドラフトで主役だった根尾昂は未だに内外野どちらに専念するかが定まっておらず、起用法に窮している現状。今回の外野手大量指名は根尾の逃げ道を塞ぎ、内野手として腹を括らせる意図があるのではないかーーというのは、少々邪推の程が過ぎるか。

 ただ、意図しているかどうかは別として、根尾がそろそろ方向性を決断する時期に来ているのは間違いないだろう。

疑問や不安が付きまとう結果に

 気になるのは、来季に向けてのストーブリーグ事情だ。不透明なビシエドの去就は抜きにしても、打線の強化を図るのであれば1,2人の外国人野手の補強は必須となる。当然、最優先すべきはポジション別wRAAで12球団最低値を叩き出した外野の補充であろう。具体名を出すならば、ソフトバンクの退団が決まったバレンティンを中日スコアラーが視察したとの報道もあった。

 ただ、これだけ大卒外野手を指名して、同じポジションの外国人を重ねて獲得するのは少々違和感がある。このあたりの擦り合わせをどうして行くつもりなのか。また、投手を一人しか指名しなかったのは又吉克樹、祖父江大輔、田島慎二、ライデル・マルティネスとの残留交渉に手応えがあるからなのだろうか。

 正直言って、今ドラフトの結果は色々と疑問や不安が付きまとうものとなった。なぜ育成ドラフトに参加しなかったのか? 外野手のうち一人くらいは高卒でも良かったのではないか? 編成上の不合理も気にならないと言ったら嘘になる。

 しかし、せっかく年に一度、明確に未来への希望を描けるイベントだ。モヤモヤしているのも勿体ない。今日ばかりは新たに竜の一員となる6人の前途を純粋に祝そうではないか。ようこそ、ドラゴンズへ!

(木俣はようやっとる)

 

ブライト健太コメント引用・『中日スポーツ』