ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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永遠のテーマ

●0-1阪神(23回戦)

 昨日をもってリーグ優勝の可能性が完全に消滅したドラゴンズ。一部報道では早くも来期以降の話題が取りざたされていた。久々のAクラス入りを果たした昨シーズンからの飛躍を期した2021年は、優勝争いに殆ど絡むことができないまま事実上の終戦を迎えた。

 残りは10試合少々。わずかな可能性がある限りは、せめて勝負を捨てずに戦い抜いてほしい。

予想どおり

 甲子園での阪神3連戦は現在2連敗中。シーズンを通しての対戦成績も、昨日終了時点で8勝12敗2分けと負け越している。ところが、直接対決での両者の得失点、防御率、チーム打率などあらゆる数字は拮抗している。何と1点差ゲームが8試合もあり、7回以降に大きく試合が動くことも少なくない。

 この日も3回裏に飛び出したジェフリー・マルテのソロアーチで阪神が先制したものの、ドラゴンズの先発投手を務めた小笠原慎之介が粘投。毎回のように走者を出しながらも、追加点を許さなかった。一方ドラゴンズ打線は昨日に続き0ばかり。阪神の先発・ジョー・ガンケルを完全に打ちあぐねていた。

 2メートル近い長身に加え、独特の角度から丹念に低めを突く投球スタイルは中々お目にかかれない。似たタイプを考えると、広島とロッテに在籍したネイサン・ミンチーまで遡ってしまう(古くてすみません)。

 予定どおり最少得点差で終盤に突入したが、この日は1-0のまま試合が終わった。いや、どちらかといえば「終わらせてしまった」が適切なのかもしれない。

数字だけでは語れない

 勝敗を分けたのは7回表の攻防だ。1死から福田永将の打球が一、二塁間を破ると、阪神ベンチは2年目左腕・及川雅貴にスイッチ。ところが、7番・高橋周平に対する3球目に暴投。しかも捕手がボールを見失い、福田に三進を許してしまう。

 及川の制球力を考えると、暴投したスライダーの連投は怖いものの、ストレートを内角に投げ切るのは更にリスクのある状況でもある。難しい判断を迫られる中、マスクを被る梅野隆太郎が左打席方向に動いた。

「もらった!」

 思わず声が出てしまったが、ボールは梅野のミットに収まっていた。一方の高橋周は弱々しく腰砕け。名門・横浜高校出身の新鋭は、143キロのツーシームを寸分の狂いもなく膝元にねじ込んだ。

 まさに “完敗”。それ以上でもそれ以下でもない。直後にあった福田のボーンヘッド以上にショックが残る結果だったのは間違いない。何せ阪神は8回に岩崎優、9回にロベルト・スアレスが控えている。それだけに、同点にするならば7回の攻撃だった。加えて、チームの中心を担うべき選手が当たり前のように凡退した事実。数字には表れることのない力の差が露呈した瞬間だった。

たらればの先に

 及川が良かったと結論付けるのは簡単なことだ。事実、大ブレイクの予感漂う左腕のボールが一級品なのは間違いない。反面、少しでも歯車が狂うと制御不能になってしまう脆さも併せ持つ。

 安打は難しくとも、犠飛や内野ゴロで同点に追いつく術もあったはず。しかしながら、ドラゴンズはチームとして何もできなかった。

 あの場面で是が非でも同点にしなければならないと仮定しよう。そうなると、前進守備だと三塁走者の脚力が要求される。本日ならば福田に代走を送るべきだったのだろうか。

 筆者が出した答えは「どちらでもない」だ。打順の巡りを考えると、9回に再度福田に打席が回る可能性が大いにあった。一昨日の試合で「あわや」の打球を放った男との対戦は、阪神サイドからするとやりづらさがあったことだろう。一方、目の前の好機をものにしなければ敗色濃厚となる場面。どちらでリスクを背負うべきか、断定するのは極めて難しい。

 ただし、ベンチに “代走の切り札” や “代打の神様” が控えていれば話は変わる。さらに、代走を送る必要がない強打者がレギュラーを張っていたら議論の余地はなかった。

 「たかが1点」、しかし「されど1点」。編成、戦術、個人のレベルアップをどのように突き詰めるかで、球団の将来は変わってくる。

(k-yad)