ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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飛び出し注意

●2-5阪神(21回戦)

 借金10の下位球団にとって台風シーズンでもあるこの季節の楽しみといえば、せいぜい熾烈な優勝争いを繰り広げる上位球団の足を引っ張ること、いわゆる “首位イジメ” くらいである。

 前節の巨人戦では今季初のスイープというオマケ付きで笑いが止まらなかったが、ところ変わって甲子園で迎えた今夜の初戦は、力の差をまざまざと見せつけられる形で完敗を喫した。

とうとう決壊した笠原

 今季3度目の登板となった笠原祥太郎は、序盤2イニングこそ三者凡退と最高の立ち上がりを見せたが、3回裏は連続四球で無死一、二塁と一転して不安材料である制球難が顔を覗かせた。

 初登板となった先月15日の広島戦は5回5四球、先週23日の阪神戦でも6回4四球と、いずれも頻繁に走者を許しながらギリギリで凌ぐ綱渡りのような投球で、防御率1.64という数字が不思議なほど、実態は不安定な内容が続いていた。

 往年の『燃えよ!ドラゴンズ』に「♪松本、渋谷のミラクル投法」というくだりがあるが、ミラクルはそう何度も起きてくれるものではない。頭では分かってはいたが、いざ決壊するとこうも脆いものか。笠原も懸命に腕を振ったが、やはり140キロ出るかどうかの球速では岩をも砕くようなパワーには抗えない。

 4回、そして5回。大山悠輔、そしてマルテの放った目の覚めるような一撃が、優勝をあきらめない阪神ファンの待つスタンドへと吸い込まれていった。放心の笠原。そして私も、ドラゴンズの攻撃力ではおおよそ逆転できそうにもない「5」という点数が刻まれたスコアボードを呆然と眺めることしかできなかった。

 終わってみれば阪神は、この2ホーマーで奪った5点が全得点となった。一方の中日も福田永将が4年ぶりの1試合2ホーマーを記録したが、いずれもノープレッシャーの場面で飛び出したソロでは焼け石に水である。

空回りだった「機動力野球」

 それよりも痛かったのは、二つの走塁ミスだ。4回表の2死一、三塁。打席には福田という絶好の先制機だったが、ベンチが福田を信用しきれなかったのか、カウント2-2からダブルスチールを仕掛けるもこれが失敗。

 浮足立った若い捕手ならいざ知らず、海千山千の梅野隆太郎に対してあまりにも安直な策だったと断じざるを得ない。この次のイニングで先頭の福田が豪快な一発を運んだだけに、なんともチグハグな印象だけが残ってしまった。

 ラストイニングの9回表は1死二塁としてまたしても福田。8球粘った末に外角の変化球を捉えた打球は一瞬期待を持たせたが、当たりが良すぎてセカンドのグラブに吸い込まれた。だが、まだ2アウト。あるいはネクストの高橋周平はバットを片手に打席へと向かいかけていたかもしれない。

 ところが次の瞬間、飛び出していた渡辺勝が戻れず、まさかのダブルプレーでゲームセットの声を聞くことになろうとは。試合を決したといっても過言ではない二つの走塁ミス。特に後者のようなボーンヘッドは見過ごしてはならない。

 与田監督は開幕前から「機動力野球」を掲げてきた。高松渡の起用をはじめ、変わってきている部分もあるにはあるが、トータル的にみれば相手にとって脅威となるような走塁にはまだまだ不十分だと言わざるを得ない。闇雲に足を使えばいいと言うほど「機動力野球」は甘いものではないはずだ。

 長打が出ない、ホームランが出ない。だからと言って足が使えるわけじゃない。じゃあ一体ドラゴンズ打線の強みとは何なのだ。こんな風に悩み続けた今シーズンも残り16試合を残すのみ。明日の相手先発は目下18イニング無失点の髙橋遥人ときた。たまにはミラクルを起こして、首位イジメを堪能したいものである。

(木俣はようやっとる)