ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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エースの矜持

○1-0 巨人(25回戦)

 9月最終日にして今年初の3連戦3連勝、5月以来の月間勝ち越し、そして5年ぶりの巨人戦勝ち越しと、今日の試合が持つ意味はとても多かった。カードが始まる前には優勝が完全消滅の文字も踊っていたところからの3連勝なだけに、中5日でマウンドに登る竜のエースが並べた7つの「0」がもつ意味は、ただの1つの勝利以上の重みがあった。

 

 今日の試合が終わった時点での大野雄大の防御率は2.82。これまでのペースで投げれば次回登板にも規定投球回に到達する。プロ入団から11年目で7回目の規定投球回、そして5度目の防御率2点台以下という偉業も見えてくる。

 そんな偉業が見えていながらも今シーズンの成績は7勝10敗と、負けが3つ先行している。10の敗北のうちの6試合は6回3失点以下、いわゆる「クオリティ・スタート」を達成していながらの敗北なだけに、打線の援護があれば勝ち負けは逆転していても不思議ではないが、果たして全てが打線のせいなのだろうか。

相手チームの目線で大野雄大という投手を考える

 大野登板時の援護点が少ない理由の1つに、皮肉にも「大野自身の存在そのもの」というものがあるように、私は感じる。2年連続最優秀防御率、そして沢村賞投手という肩書きこそが、相手チームにとって「1点もやれない」状況を作ってしまっているのだ。

 大野雄大という投手の存在は、大野自身が、ひいてはチームが考えているよりもはるかに大きい壁となって本人の前に立ちはだかってしまっているのだ。

 何せ2年連続で最も点を取れない投手という称号を手にしているのだ。昨年の20登板のうち6試合が完封、登板試合で1失点以下という試合は半分以上の12試合にものぼる。そうなってくると相手チームからすればいかに大野から1点を取って、そのリードを守り切るかというゲームプランを作らざるを得ない。

 なおかつ先発投手は1点でも取られたら負けを覚悟しなければいけないとなると、初回から点を取られないようにいつもよりも飛ばして投げることになる。

 今月5登板で4勝、防御率0.95と月間MVPの可能性のある松葉貴大が、安定したピッチングが続く秘訣を「とにかく初回から全力で、長いイニングを投げるとかを考えないこと」と語っていた。大野と対峙する相手先発は、まさにこの状態で立ち向かわなければ勝てない訳だ。

 確かに今年の打線は状態が悪いのは誰が見ても明らかで、1点も援護がない試合も5試合を数える。だが、上記のような相手投手の状態であれば、大野自身もそれを把握してマウンドに立った以上は、自分も点を取られないピッチングをしなければいけない立場でもある。

残り3試合登板で二桁到達

 今日の好投で今年のWHIPは0.998と1を割り込んだ。単純計算で1イニングあたり1本の出塁を許すか許さないかということになる。2019年に最優秀防御率(2.58)を獲得したときのWHIPは0.98なので、開幕当初は不調に苦しんだ今季も結局はさほど変わりない数値まで戻してきた。その中で防御率が0.25高くなり、負けが先行していることを考えると、今年は効率よく失点している裏返しにもなる。

 なので私は大野に対して厳しめの目で試合を眺め、伏兵のホームランによる失点の場面などはしかめっ面をしている。こと防がなければいけない失点というのは、負けに直結し、ともすればチーム状態をも左右してしまう。

 もちろん私も昨年のような状態でないことは十分に分かっているし、その反動が今年に来ていることも重々承知している。非常にレベルの高い話になっているが、打線が低調なチームであることを踏まえた上で、エースに求められる「勝つための内容」とはスコアレスの引き分けに持ち込み、負けがつく試合にしてはいけないということだ。

 中6日で投げ続ければ残る登板は3つ。全て勝つと10勝10敗で星を5分に戻すことができる。残りの登板でエースの矜持を見るのが楽しみだ。

(yuya)

 

松葉コメント引用:2021/9/14 中日ドラゴンズ公式チャンネル(Youtube)