ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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全て大事

○5-0巨人(24回戦)

「藤井淳志、引退」

 今朝目を覚ますと、秋を強く実感するニュースが流れていた。同一球団で16年。大学、社会人を経て40歳まで奮闘を続けたプロ野球生活に敬意を表したい。

 実にプレーが映える選手だった。ルーキーイヤーとなった2006年の開幕2戦目、左中間へのライナーをダイビングキャッチした際には無限の可能性を抱いたものだ。お疲れ様でした。

文句なし

 去る人がいれば、必ず誰かが出てくるのがプロ野球。昨日一軍昇格を果たした岡林勇希が8番・レフトで先発起用された。絶対的な存在の大島洋平が約10年君臨し続けるセンターを除き、ドラゴンズの外野陣に不動のレギュラーはいない。

 現在は大御所・福留孝介が当たり前のようにスタメンを張っている。若手選手の台頭を渇望する中、期待のホープは首脳陣の期待に一発回答した。

 まず魅せたのは外野守備だ。4回表・2死三塁、打席には小林誠司。その初球だった。やや詰まり気味のライナーがレフト前に落ちようとした瞬間、背番号60が猛スピードで滑り込んだ。ボールをしっかりとグラブに収め、先制点を阻止。チームに流れを引き寄せるビッグプレーとなった。

「一歩でもスタートが遅れていたら……」

「スライディングで減速していたら……」

 どれか一つでも欠けていたら、おそらく本日勝利の美酒は味わえていない。

 守備の次はバッティングでの活躍を求めてしまう中、あっさりと仕事をしたのが実に岡林らしい。先制した4回裏に続き追加点を挙げ、なおも2死二、三塁。押せ押せの局面で巨人の先発・高橋優貴が初球に投じた、肩口から真ん中寄りに入ってくるスライダーを2年目の若武者は見逃さなかった。結果はライトへの犠牲フライ。岡林にとっては嬉しいプロ初打点となった。

 この一打席で終わってしまったら “一発屋”。しかしながら、そうならないのが天才と称される所以。変化球をキッチリと外野に運んだ前の打席から一転、この打席ではスピードボールが武器の田中豊樹の151キロに振り負けなかった。打球は三塁線を勢いよく破り、俊足を飛ばして二塁へ到達。続く渡辺勝の二塁打で悠々とホームベースを駆け抜けた。

超えたい背中

 本日の試合中、ふと思った事がある。岡林は福留のことをどう思っているのだろうか。

 19歳の岡林と44歳の福留。タイプは異なるが、親子ほどの年齢差のある大先輩のプレーから何か感じるものがあってほしい。いや、あってもらわないと困る。球界最年長プレーヤーは連夜の大活躍。攻守でチームを盛り立てると、タイムリーを含む2安打を放った。そして特筆すべきは5回裏に見せた走塁だ。木下拓哉が放った三遊間を抜ける安打で躊躇なく本塁を陥れた。

 打球自体は決して強い当たりではなかったが、まだノーアウト。しかもレフトのゼラス・ウィーラーはチャージをして捕殺を狙っていた。大ベテランを無理させる場面ではないにもかかわらず、楽々生還できたのは身体能力だけで野球をやっていない裏付けでもある。

 飛んだ打球、外野手の送球能力、本塁での捕手のポジショニング。全てを頭にインプットしたうえでの匠の技。それ故に、打球を確認した直後には三塁で止まる素振りを一切見せず、トップスピードに乗っていた。そう、背番号9は打つだけではない。頭脳も含め、何をとっても「超一流」なのだ。

 要塞・バンテリンドームを本拠地とするドラゴンズは守りのチームと呼ばれて久しい。しかし「ドーム野球」の真髄は走攻守いずれもハイレベルの野球を展開することであったはず。そして、その象徴が鳴り物入りで入団した当時の背番号1だった。

 岡林が青いストッキングを見せながら、近未来バンテリンドームを駆け回る姿を想像するだけでワクワクしてくる。走攻守の更なるレベルアップとともに、「初代・ドーム野球の申し子」から球界を生き抜く強かさを吸収することを祈っている。

(k-yad)