ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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香車のような真面目人間

○1-0ヤクルト(18回戦)

 自チームのアウト判定を確定させるためにリクエストを行い、結果として「4-3-6-3-6-3-2」という奇妙なダブルプレーをもって試合終了……。だが、ヤクルトの高津臣吾監督の抗議は収まらなかった。帰らないランナーにバットを振り続ける打者。判定は変わらなくとも、現場の責任者として敢えてファイティングポーズを「見せる」ことで連敗したチームを奮い立たせることも必要なのだろうな、と考えてしまった。

小笠原、大人のピッチング

 先発の小笠原慎之介は6月のロッテ戦でも最終回にリクエストによるプレーで勝利の瞬間が失われ、前回登板も5点差をひっくり返されるなどゲームセットの瞬間に度々見放されていた。それ故にヒーローインタビューでベンチから出てくるその瞬間の笑顔には安堵の表情も幾らかあっただろう。

 真っ直ぐと変化球のコンビネーションはホームベースの左右だけでなく、前後も使う立体的なピッチングでフライアウトを量産。球場の大きさを利点に捉え、実に11個のフライアウトを積み重ねた。特にチェンジアップはキレがよく、ストレートと錯覚するくらいスピードガンより早く見えるほどの魔球だった。9連戦の苦しい中に中5日での7イニングは、苦しいチーム事情、とりわけブルペン陣の負担を軽減させる非常に大きな役割だった。

 これでキャリアハイを更新する7勝目だ。二桁勝利、防御率2点台、そして規定投球回クリアも見えてきており、ついに真価が発揮される時がやってきた。

小笠原を救ったビッグプレー

 小笠原が7回無失点の好投ができた背景に、加藤翔平のビッグプレーがあった。初回、2アウト一、二塁の場面でオスナが放ったライトへの当たりを俊足飛ばしてスライディングキャッチ。打った瞬間はヒットゾーンに落ちるかと思っただけに初回の3つ目のアウトを良い形で取れたことで、無失点ピッチングにつながったとも言えるだろう。

 打率は2割前半、得点圏打率では未だにノーヒットが続く加藤。打点1は移籍後初打席に放ったホームランのあの1つだけだ。だが、加藤の好プレーは至る所に散りばめられている。今日も打つ方ではノーヒットも、7回の場面ではしっかりと犠打を決めチャンス拡大に貢献。追加点とはならなかったが、しっかりと自分のできることを確実にこなすことができる加藤の評価は数字以上のものがある。

 トレードが決まった日、このブログで加藤のことを「ハチャメチャさを持つ選手」と形容した。それだけデビュー初打席初球本塁打に代表される派手なシーンが、ロッテというチームカラーと相まって先述のようなイメージを私に植え付けたのだと思う。
 だが、朴訥とチームのためにプレーする姿に加え、球団公式のYoutubeで見る彼の姿は移籍前に思い描いていた姿を打ち消して真面目な好青年というイメージになった。まるで誰からも慕われる良きお兄さんのようで、すっかり惹かれてしまった。


 彼を入団当時から知るロッテファンからは、

アスリート教育を徹底されてきた、香車のような真面目人間。それが翔平。
それが物凄い突破力も生むし、斜めや側面の弱さでもある。

 と、加藤を将棋の駒に例えて紹介があった。まさにプレースタイルは喩えの通りだ。打席1つにしても、追い込まれてからの出塁に対するアプローチの変え方や、セーフティバントを敢えてファールにして相手守備にプレスをかけるなど、何をしたら相手は嫌なのか、ということを徹底する。

 その反面、考えすぎて自分を押し殺してしまうがあまりに淡白な打撃結果になることも多く、得点圏で安打が生まれないことにも起因しているのかもしれない。ただ、個人的には人間性も、プレースタイルもとても好きな選手であることは間違いない。

生で見た加藤の"凄さ"

 先日観戦に足を運んだ草薙球場でも加藤の凄さを目の当たりにした。場面は満塁、加藤は二塁ランナーにいた。打席のビシエドがレフトへ犠牲フライを打ったとき、加藤は躊躇せずにハーフウェイから大きく飛び出した。

 レフトへの当たりなので二塁ランナーは三塁へ窺うことは難しい。で、あれば自分が戻れるギリギリのところまで離塁してバックホームを諦めさせる、または外野手を慌てさせて返球ミスを誘うというようなプレッシャーをかけるそのワンプレーは、恐らく中継でも全く触れられていないだろうが、個人的には大きく膝を打った場面だった。

 

 入団会見時の言葉を思い返そう。

ドラゴンズが優勝する、日本一になるために、僕も身を粉にして、全力プレーで頑張っていきたいと思います。

 あれから3ヶ月、随所に彼の持ち味は発揮されている。

(yuya)

 

入団会見参照:「中日ドラゴンズ オフィシャルウェブサイト」