ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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なぜ・・・

○9-5ヤクルト(17回戦)

 昨夜、遠く離れた英国・マンチェスターでの「王の帰還」の知らせは、瞬く間に全世界を駆け巡った。マンチェスター・ユナイテッドに2008-2009年シーズン以来の復帰を果たしたクリスティアーノ・ロナウドが早速の2ゴール。クラブの絶対的エースとして君臨したサッカー界のスーパースターは、再びファンの期待に応えたのだった。

 この日は極東の島国で同様の事が起こった。場所はバンテリンドーム。王の名は福留孝介という。プロ野球界で一時代を築いた男は、7回裏に起死回生の同点ツーランを放つ。

 感情を爆発させたロナウドとは対照的に、福留は顔色を一切変えることなくダイヤモンドを一周した。「チームが苦しいときに打つ」。今シーズンから再び青いユニフォームを身にまとい、最高の結果を残す姿はあの頃のままだ。

“訊きたいでも訊けない”

 本日の試合は序盤からジャリエル・ロドリゲス、原樹理の両先発が大乱調。ジャリエルが初回にヤクルトの主砲・村上宗隆に先制スリーランを浴びると、その後もなかなかリズムを取り戻せずにいた。3回終了時までに要した球数は86球。対する原に至っては、3回を持たずKOされしまった。

 泥仕合というべき序盤の攻防で気になったのが、3回表のジャリエルの投球だ。2死走者なしからドミンゴ・サンタナに右前に運ばれてしまう。返す刀で二盗を許し、7番・元山飛優を四球で歩かせた後に事件は起きた。

 打席には8番・捕手の古賀優大。3割近い打率を残している正捕手・中村悠平はベンチスタートとなっている。ドラゴンズは古賀に7月3日の試合で4安打3打点と打ち込まれた。しかし中村に比べて恐れる必要がない相手だ。

 にもかかわらず、選んだ作戦は摩訶不思議なものだった。カウントが2-0となった直後、何と申告敬遠を選択。いくら次の打者が投手とはいえ、二人の走者を進塁させてしまう。さらに若き助っ人の状態を考えると、押し出しを献上する可能性も大いにあったはず。

 結果的には三振でピンチを切り抜けたが、最初の2球は明らかにすっぽ抜けだった。申告敬遠の意図をベンチに尋ねてみたいところだ。

気の利いた偶然

 大怪我を負ってしまうリスクを抱えながらも、敢えて一塁を提供したのはリリーフ陣の運用を考えてのことだろう。本日は9連戦の6試合目。ただでさえ登板過多になりがちにもかかわらず、広島、東京と続いた遠征が終わった直後の試合だ。フレッシュな状態の新人の森博人や、出場選手登録されたばかりの佐藤優がいるとはいえ、先発投手の早期降板は回避しなければいけない。

 しかも前日にリリーフ投手を4人注ぎ込んでいる。仮に3回途中から交代させるとなると、残りのイニングのやりくりが極めて難しいものになってしまう。不可解な判断ではあったが、連戦を戦う首脳陣としては背に腹は代えられない思いだったのではないだろうか。

 決断は最終的に吉と出た。その回を切り抜けたことで、内容はともかくジャリエルを5回途中まで引っ張ることに成功。そして圧巻だったのは2番手・藤嶋健人だ。無死一、二塁の場面で登場した背番号54はサンタナをセンターフライに打ち取ると、続く元山のスクイズを華麗なフィールディングで阻止。最後は8番・古賀を打ち取り、ピンチを脱した。

 5回裏の反撃の1点は直前のピンチを切り抜けたからこそ、もぎ取ることができたといっても過言ではない。続く6回表もスコアボードに0を刻んだ藤嶋は、「走者有からの登板」と「回跨ぎ」という救援投手泣かせの場面を難なく乗り切った。

 例の申告敬遠についてあれこれ言うのは結果論でしかない。しかしながら、繊細で壊れやすいゲームを大切に扱ったが故の勝利は、決して偶然では生み出せなかったと断言できる。

(k-yad)