ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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ミスタードラゴンズの系譜

○5-4巨人(22回戦)

 「911」から20年。ちょうどあの時期に荒木雅博と井端弘和の二遊間が1、2番でスタメンに座ることが増えだしたのを思い出す。まだ「アライバ」という呼称は付いていなかったが、それまでのドラゴンズの無骨なイメージとは違ったスタイリッシュな二人のプレースタイルに新時代の到来を感じたものだ。

 時代はひと回り、いやふた回りして、今ファンを久しぶりに心底ワクワクさせている若者がいる。背番号「45」、土田龍空だ。まだ18歳ながら今月3日に一軍合流。溝脇隼人の故障に伴う緊急昇格という意味合いが強かったものの、昨夜の攻守にわたる衝撃的な活躍を見てしまえば、スタメン起用を期待せずにはいられない。

 もし京田陽太との “京龍コンビ” による二遊間がスタメンに並べば歴史的な日になるぞ、といつもより身構えてその時を待っていたのだが、オーダーの「4」の横にその名が記されることはなかった。

 やや消極的に映る与田采配(実際に誰がスタメンを考案しているかは置いておく)に対し、一軍に上げたばかりの新外国人スコット・ハイネマンを即起用する原辰徳の “鉄は熱いうちに打ちまくる” 的な積極さが、少し羨ましくもあった試合前。

 しかしながら軍配が上がったのはドラゴンズ。そして攻撃の起点になったのは、昨夜に続いて絶好調の京田だった。

2ホーマーから一夜明け

 プロ入り初の先頭打者ホームランに、1試合2ホーマー。5年目にして唐突にやって来た初モノ尽くし。試合後のインタビューで京田が語ったのは、かつて同じ背番号「1」を背負った大先輩への感謝だった。

「福留さんにゴマすってる訳じゃないですよ。『次こうくるから、そのように打席に立ってみたら』と言われて、そのまま立ったホームラン。やばいです。(配球?)ここでは言えないですけど…」(引用元:スポーツ報知)

 184㎝、88kgの恵まれたその体躯は、福留孝介にも引けを取らない、“大型ショート” と呼ぶにふさわしい素材である。ただ、遊撃手として失格の烙印を押された福留とは対照的に、京田は守備の達人としてキャリアを築いてきた。その代わりと言ってはなんだが、バッティングの方では今ひとつ伸び悩んでいる感が否めない。

 バンテリンドームを本拠地とする選手の宿命と言うべきか、京田は入団当初からゴロの多い打者として育ち、今季もゴロ割合58.8%とレギュラークラスの選手では突出した数値を記録している。一、二塁間を抜ける鋭い打球もいい。ただ、願わくば体格にふさわしい打球がもう少し増えてくれると助かるのだが……。

 そんなファンのワガママを叶えてくれたような2ホーマー。一夜明け、京田が打席に立つたびについ一発を期待してしまったのは私だけではなかろう。京田ならもっと打てる、京田ならもっと飛ばせるはずだーーと。

 ホームランを麻薬のように欲してしまうのはファンだけでなく、打った選手自身も快楽を求めてフェンスの向こう側を狙い、その結果フォームを崩してしまうことは珍しくないそうだ。ましてや一日に2本も打てば、尚更その副反応は強く出てもおかしくない。その意味で今日は、期待とは裏腹に一抹の不安も抱いていたのだが、そんな心配は及ばないとばかりに京田らしい打球のオンパレードで魅せてくれた。

受け継がれる “ミスタードラゴンズ” の系譜

 5月以来の猛打賞は、すべて単打。特に2打席目、叩きつけて三塁手の頭を越える一打は、前夜に2ホーマーをかっ飛ばしたのと同じ選手とは思えないような技ありのヒットだった。最近5試合で21打数8安打、打率.381と遂にバッティングを掴んだ感すら漂う。躍進を手助けした福留の功績は計り知れない。

 では春季キャンプでの立浪和義氏によるマンツーマン指導に効果は無かったのかというと、それは違うと思う。立浪が丹念に下味を付けたからこそ、福留の隠し味が効いたのだと私は考える。根拠はない。でもその方が夢がある。

 その伝授された教えを、今度は京田が土田に伝え、20年後くらいには土田が未だ見ぬ誰かに伝え……、そうやって “ミスタードラゴンズ” の系譜は、どこまでも続いていくのである。

(木俣はようやっとる)