ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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ここへ投げろ!

○1-0 DeNA (16回戦)

 守護神、R.マルティネスが危なげない投球でゲームを締めくくり、スミ1での勝利を手にした中日ドラゴンズ。チーム防御率はリーグでもダントツの3点台前半で、2点台も視野に入るようになってきた。

これが俺たちのエースだ!

 先発の大野雄大。ここまで4勝8敗と乗り切れずにシーズンを過ごしてきている。去年、一昨年は影を潜めていた大野の悪癖でもある勝負球が甘く入る場面が今年は多く、8敗のうち4敗はQSを達成していながらも負けがついている。

 だが、今日のピッチングは昨年の沢村賞投手・大野雄大そのものだった。序盤のストレートは150キロに迫り、右打者には変化量の大きいツーシームを、左打者には絶妙に芯を外すカットボールを投げ分けて強打のDeNA打線を完全に封じ込めた。3度のピンチも全く動じることなく、イニング終わりには涼しい顔でベンチに戻ってくる姿は、我々ファンが待ち望んでいた大野だった。

100点満点を導いた木下のナイスリード

 先発の大野からバトンを受け継いだ2番手の又吉克樹、3番手のR.マルティネスにも言えることだが、今日の投手陣は制球が非常に安定していた。投げたボールが寸分違わずに木下拓哉のミットへと収まるシーンを今日だけで何度目撃しただろうか。

 そうなるとリードする木下も楽しくなってくる。大野がランナーを出したところでコースに投げきる制球力があれば、思った通りの結果になる。2回の大和に対しても4球続けてインコースを要求し、大野は全てそれに応えた。結果は力のないショートフライ。続く打者も理想的な三振に仕留め、簡単にピンチを切り抜けた。

 

 木下のリードは投手に「ここへ投げろ」というような、コースビタビタに構える特徴がある。又吉が桑原将志から奪った見逃し三振は、すべてが完璧だった。

 投げミスさえしなければ……いや、それまでの投球の過程がしっかりしていれば少々の投げミスでも抑えられるような厳しいコースを要求している。とはいえ、投手陣全員がそこに投げきる制球力を持ち合わせている訳ではない。制球がアバウトな投手には内角・外角の2分割であったり、高め・低めを足した4分割でコースを指示することは、プロの世界でも目にしている。

 

 8月20日まで時は遡る。木下が吐露した複雑な心境。チームの中では「木下外し」が囁かれていたという報道まで明るみになった。ここでは語らないが、確かに上記特徴を踏まえればもっと気を楽にして投げたい投手の声が挙がることも理解できなくはない。木下が確固たる正捕手として扇の要を全うするには、投手のタイプそれぞれに応じたリードができるような、そんな臨機応変さが求められてくる。

明暗を分けた「ここへ投げろ!」

 ところで先制決勝点となった福留孝介のタイムリーまでの場面を覚えているだろうか。京田陽太がエラーで出塁し、高松渡はインコースのストレートを打ちにいくもどん詰まりのピッチャーゴロ。続く大島洋平もインコース攻めに苦しんだ。

 相手バッテリーの京山将弥と山本祐大は、中日がズラリと並べた左打者に対して果敢にインコースを攻めた。勢いのあるストレートとカットボールに、大島の打席までで私は「今日は苦労するかもしれないな」と思いながら試合展開を予想していた。

 だが、4番のビシエドに与えた初球のデッドボールを見て、得点の気配を感じた。インローに構えたボールが高めに抜けたボールだったため、コースは間違えていない。ただ、高くなった分デッドボールになってしまった。

 続く福留に対して、山本は真ん中から外よりへとミットを構え続けた。そして6球目、ビシエドに当てて以来はじめてインローにミットを構えた。だが、京山の投げたカットボールはど真ん中に吸い込まれ、結果的に決勝点を献上してしまった。山本の「ここへ投げろ!」が叶わなかった瞬間でもあった。

 

・インコース攻めで左打者から2アウトを取ったこと

・打線の軸である4番打者に与えたデッドボール

・福留孝介という大ベテランに対してはじめて構えたインコース

 

この3つが伏線となって生まれた福留のタイムリー、虎の子の1点を守り抜いた投手陣、そして勝利に導いた木下のリードに酔いしれたナイスゲームだった。

(yuya)