ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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トンネルとタメ口

●1-2阪神(16回戦)

 目を疑うような光景だった。同点に追いつかれた直後の6回1死一塁。サンズの打った打球はショート正面を突くなんでもないゴロ。誰もがゲッツーだと思った。MBSラジオの八木裕解説員も「プロだから。草野球じゃないからゲッツーだと思うよネ」とタメ口で振り返った、おあつらえ向きのゲッツーコースだ。おそらくマウンドの松葉貴大も内心ガッツポーズしたことだろう。

 ところが、である。打球は京田陽太の差し出したグラブには収まらず、レフト前へと転々。ファンブルや取り損ねならともかく、年に一度あるかどうかの珍プレー・トンネルがここで出てしまった。チェンジのはずが一転してピンチ拡大となり、あとを受けた田島慎二が粘れず逆転。まさしく勝敗の行方を左右する致命的なエラーとなった。

 どんな名手でも100%はあり得ないし、これまで幾度となく好プレーでチームを救ってくれた京田に対してどうこう言うつもりは無い。なんなら今日の5回にも深い位置から矢のような送球でアウトをもぎ取っており、たかがトンネルごときで怒りを感じるなど愚か者のそしりは免れないだろう。

ビジターで勝てない松葉

 試合後、京田は「僕のせいで負けました」とコメントしたそうだ。そんな事はない。ならば京田のおかげで勝てた試合を一個ずつ挙げて褒め称えたいくらいだ。そのくらい京田の守備にはいつも感謝している。感謝してもしきれないほどに。

 ただ気の毒だったのは松葉だ。鬼門の6回に今日も捕まりかけたが、どうにかゲッツーを取り、同点どまりで踏みとどまった。ホッとした矢先のピンチ拡大。できればイニングの終わりまで投げてほしかったが、一旦切れた気持ちを立て直すのはそう簡単なものではない。ここでリリーフにスイッチしたベンチの判断は、結果はどうあれ適切だったと思う。

 それにしても松葉はどうしてビジターになるとこうも勝てないのか。昨年はホームこそ3勝負けなし(防御率1.34)と盤石の安定感を誇りながら、ビジターでは反対に0勝7敗(同6.35)とまるで別人の成績に終わった。中日移籍以降は今日を含めてビジターで12試合登板して未だ白星なし。最後に勝ったのはオリックス時代の2018年8月5日(ヤフオク)まで遡る。実に3年にわたってビジターに嫌われ続けているのだ。

 今日は初回に満塁のピンチを凌いだ以降は危なげない投球を見せ、4回には味方が先制。なんとか6回まで投げ切ればあとは鉄壁のリリーフ陣に任せて移籍後初のビジター勝利なるかと思われただけに、滅多に出ない京田のトンネルまで絡んで黒星を喫したのはもはやオカルト的ですらある。山本昌の日本シリーズ未勝利に続いて、「ビジターで勝てない松葉」も今後語り継がれていきそうなジンクスだ。

防げたヒットでピンチを招く

 とはいえ単なる運の話ではなく、松葉にも問題はある。中日移籍後のビジター12登板のうちQS(6回3失点以内)を記録したのはわずか一度だけ。目下11登板連続で6イニング未満もしくは4失点以上という状態では、強力な援護が期待できないドラゴンズにおいては白星に見放されるのも無理はなかろう。

 今日もエラーは気の毒だったが、その前に単調な攻めで先頭を出し、あっさりと同点タイムリーを許したのはいささか不用心だったと言わざるを得ない。近本光司のヒットは初球の真ん中ツーシーム。マルテのタイムリーはカウント0-1からの真ん中ストレート。どちらも防げたヒットではなかったか。

 すいすいと投げ進みながらも中盤にやられるいつものパターンを今回も繰り返してしまった松葉。ラジオ解説の八木氏は試合を決したポイントを「京田のダプルプレーを取れなかったトンネルだネ。あれが全てじゃないかな」となぜかタメ口で総括していたが、そこに至るまでの流れを作ってしまった松葉の投球もやはり反省の余地はありそうだ。ローテ通りなら次戦もビジター登板が予想される。今度こそ、ちゃんとやってヨ。

(木俣はようやっとる)