ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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自分を信じた今に感動を

○4-1 巨人(18回戦)
 あと「3」に迫っていた外国人選手の球団打点記録、ビシエドはあっさりと2打席で塗り替えた。先の静岡では度々の得点圏で犠飛による1打点に終わったが、準……いや、「純」地元の名古屋でその記録を更新したことは、これからも名古屋でお世話になるよというビシエドからのメッセージなのかもしれない。

 草薙での2戦目後のインタビューで「勝つことよりも将来を見据えた起用法は考えているか」という言葉に対して、与田監督は「勝ちを諦めることはないです」と強調した。

 これに対しネット上では「何を言うか」と鬼の首を取らんかのように噛み付いている意見を目撃したが、もしあなたが与田監督だったとしたら、その質問にどう答えるだろうか。

 将来を見据える……となると大型契約の最終年かつ外国人選手のビシエドは真っ先にその候補となり得るが、球場の歓喜の渦を見るに、やはりこだわるべきは勝利だろう。ビシエドの姿にグッと来てしまった。

意思を曲げない戦士に喝采を

 そして嬉しいニュースが朝から飛び込んできた。石岡諒太の支配下登録だ。新しい背番号である「00」を身にまとったその日焼け姿は炎天下の中でたゆまぬ努力を続けてきた証。不甲斐ない一軍野手陣に喝を入れるためにも、石岡のその打棒には大いに期待したいところだ。

 石岡といえば、入団当初の背番号36を前年まで背負っていた小笠原道大二軍監督(=当時。現日本ハムヘッドコーチ)のようなフルスイングが魅力で、2016年の秋季キャンプ最終日のフリーバッティングでは快打を連発。次々とライトスタンドへ消えていったその打球はさながら「ガッツ小笠原」を彷彿とさせた。打球の行く先を確認しては歓声が挙がると共に、「石岡はエグい」という評判が一気に広まった。練習後、秋季キャンプ最終日恒例のサイン会では、石岡の列にたくさんの人が並んでいたことを今でも覚えている。私の家にも落合博満、小笠原道大、タフィ・ローズ、フリオ・フランコと並んで石岡のサインが飾ってある。その時は彼のブレークを信じてやまなかった。

 だが、私を含めその場を目撃した人間は、秋季キャンプ最終日の、ほんの数分の出来事に心を踊らせていたに過ぎなかった。その「ほんの数分の出来事」は見えない重圧となり石岡にのしかかった。翌年は一軍キャンプを完走したもののオープン戦で二軍に合流、一軍でのお披露目は途中でのお試し昇格にとどまった。その昇格を最後に、石岡を一軍の公式戦で見る機会はなくなってしまった。チャンスを掴もうにも度重なる故障に泣き、ついには2018年オフに育成落ちとなってしまった。

 それでも石岡は信念でもあるフルスイングを貫いた。今年は開幕から打撃が好調で、率を残すだけでなく長打も増えてきた。パワーだけでなくスピードも兼ね備えたアスリート体型はウエスタンではチーム2位タイの8盗塁を記録。体調が万全であれば二軍でくすぶっているような選手ではないことが分かるだろう。怪我を重ねても手放さなかったフルスイングが一軍の舞台で輝くときこそが、あの「数分の出来事」が間違いでなかったことを証明することになるだろう。

同じ夢持つものに成功を

 補強期間も残り4日。育成からは近藤廉、山下斐紹、そして石岡が支配下登録を勝ち取った。中日に限らずだが、二軍の試合を見ているととりわけ3桁の背番号を背負う選手のギラギラした目が印象的だ。制球には難があるものの150キロを悠に超すストレートを投げる投手や、すべてのポジションを守ることができるユーティリティ性の高い野手、転がせばたちまち内野安打にしてしまう俊足が持ち味の野手、異国の地で夢を叶えるがために必死に野球に打ち込む外国人など、バックグラウンドは様々だが、彼らは揃って「支配下登録」を目指している。今日マルチ安打でビシエドの記録更新のお膳立てをした渡辺勝も、かつては育成選手だった。

 同じ枠を争うライバルが先に支配下登録されることで焦りもあるだろうが、ハングリー精神は多ければ多いほどチームを活性させ、より高いレベルで競争を産む。こういう突き上げがどんどん起こるようなプロ野球界であってほしいと願っている。

(yuya)