ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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高くて良いもの、良くないもの

○6-2阪神(13回戦)

 まさに完全復活。かつて「タジ魔人」と称された男に相応しい活躍だった。5回から2番手で登板した田島慎二が阪神の上位打線を3人で料理し、今季初勝利。2017年8月10日以来1472日ぶりの白星は、不調とトミージョン手術を乗り越えてのもの。新人時代からリリーフ陣の一角としてフル回転を続けてきた右腕は、これからもドラゴンズに欠かせない投手として、ピンチを救ってくれるに違いない。

世界共通の合言葉

 「投げる高さを間違える」。日頃の野球解説で頻繁に耳にするフレーズの解釈は人それぞれだ。名将・野村克也の「困ったら原点(外角低め)」に代表されるように、日本球界では投手が高めに投げることを忌み嫌う文化がある。

ところが以前テレビで放送された田中将大(楽天)と前田健太(ツインズ)の対談では、MLBの選手に対しては内角高めで勝負したほうが有効とお互いの見解が一致している。田中曰く、日本においては野村の意見は間違いないものの、ローボールヒッターが多い米国では通用しないとのこと。師匠の教えが及ばない部分があることに気が付き、海の向こうで自身の投球を改良した弟子の言葉は実に興味深い。

 一方野手の送球で “高投はNG”。これは万国共通、プロ・アマを問わず言えることだ。

 中継プレーにおいて適切な高さで送球できなければ不必要な進塁を許してしまう。高校野球では無理なバックホームで却ってピンチが拡がり、ビッグイニングの要因となることは珍しくない。速く、低い球を投じるのは当たり前言えばそれまでのこと。しかし本日の試合では気になる場面が散見された。

 2回表、1死一塁でロハス・ジュニアがレフトオーバーの二塁打を放った場面。クッションボールの処理をしたレフト・渡辺勝の送球がすっぽ抜けてしまい、フライのような軌道に。恐らく指先が滑ったものと思われるが、冷や汗が出てしまうプレーだった。失点に直結することはなかったが、隙を見せたのはいただけない。

何気ないワンプレー

 守備で綻びを見せかけた反面、その裏の攻撃では京田陽太が阪神のミスに付け込んだプレーを見せる。2死二塁で頼れる選手会長の打球はゴロで一二塁間を抜け、二塁走者の溝脇隼人が快足を飛ばし、ヘッドスライディングで生還した。

 賞賛すべきは打った直後の走塁だ。ボテボテ気味の打球に対し、ライトを守る佐藤輝明は渾身のチャージとバックホームを見せた。だが肝心のボールはカットに入ったファーストの遥か頭上。ジャンプしても届かない送球を確認した背番号1は躊躇することなく二塁を陥れた。

 仮に二塁を狙わなかったら、2死一塁で次の打者に回る。そうなると、長打を打たない限り得点できない。しかしながら、キッチリと二進したことによって単打でも次の1点をもぎ取ることができる局面に変えた。長打力に欠ける打線にとっては、貴重なアシスト。結果的に続く渡辺は凡退したが、相手バッテリーに対してより大きなプレッシャーをかけることができたのではないだろうか。

 一連の動きを涼しい顔でやってのけるのは、伊達にレギュラーを何年も張っているだけのことはある。瞬間的にド派手な活躍をする選手の登場は喜ばしい反面、長いペナントレースを考えると頼りにはできない。対照的に、当たり前のプレーを継続して披露できる存在は実にありがたいものだ。

 リーグ戦再開後は1番起用が続くチームリーダーに対して、辛辣なコメントをする方もいる。秘めているポテンシャルや期待度に対して物足りない個人成績なのは事実だが、丸4年最前線で身体を張った尊さを認めても良い。辛口の意見を封じ込めるには目に見える数字と優勝だ。この2つが揃えばプロ野球選手・京田陽太の価値は一気に高くなる。過小評価されたまま終わるのはあまりに勿体ない。

(k-yad)