ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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目標の置きどころ

●1-6巨人(16回戦)

 夢に日付を入れれば目標になる、と言ったのはワタミ創業者の渡邉美樹だったろうか。〆切のある目標ならば、具体的な計画を立ててアプローチせざるを得なくなる。その積み重ねにより、おのずと夢の実現に近づけるというわけだ。

 氏のパーソナリティは脇に置いておくとして、“目標” が人間を突き動かす原動力になり得るという考え方は概ね間違っていないだろう。難しいのは目標がない、あるいは見失った場合、モチベーションをどこに置くのか? だ。

 先の東京五輪での男子400メートルリレー決勝で、日本代表がバトンの受け渡しミスをした際に途中棄権を決断したのは記憶に新しい。たとえ最下位でも最後まで走りきるという選択もできたはずだが、代表メンバーはメダルの可能性が事実上、消滅した時点で「走る意味なし」と判断したことになる。本気でメダルを狙いに行ったからこそのやむなき撤退といえよう。

目標なきチームの虚しさ

 一方でプロ野球のペナントレースは全チームに143試合の完走が義務づけられている。たとえ優勝の目が消えようが、順位が決定しようが、全試合を消化するまでは退場することはできない。

 後半戦の開始早々、あっけなく連敗を喫したドラゴンズ。残り55試合、一体どこに目標を置いて戦おうとしているのか。残念ながら昨日、今日の戦いぶりからは何一つとして伝わってくるものは無かった。

 かたや巨人は首位阪神とわずか1ゲーム差に付けており、3連覇も射程圏内に捉えている。「ワッショイ・ベースボール」というキャッチフレーズを掲げるなど、来たるべき勝負どころに向けて虎視眈々と準備を進める原監督につけ入る隙は無さそうだ。

 両者が対戦すれば、その差は歴然。ワンチャンスを逃すまいと集中力を研ぎ澄ます巨人の打者に対し、淡々と好機を潰すドラゴンズの攻撃は見ていて虚しすら感じるほどだった。

 これが目標に向かって一丸となるチームと、目標を失いつつあるチームの差なのかーー。初っ端から逆転3ラン、中押し、ダメ押しと効率よく失点を重ねるなど、勝ち筋をまったく見出せないまま完敗。どうしようもない塩試合の中で気を吐いたのが、2安打を含む4出塁を記録した京田陽太だった。

自分のためにプレーする

 プロ入り初の二軍落ちを経験した前半戦。復帰後は主にトップバッターを任されて47打数12安打、打率.255と一見すれば代わり映えのない成績だが、引っ張りの鋭い打球が増えるなど覚醒の兆しは見えつつある。

 入団以来、不動のレギュラーとして試合に出続けてきた。選手会長も務め、ちょっとやそっとじゃ降格にはならない、それだけの地位を築き上げた。ところが5月下旬、ソフトバンク戦後に監督室に呼ばれ、降格を告げられた。まさかあの京田が怪我以外の理由で抹消されるとは……。ファンの間でも衝撃が走ったのだから、北海道遠征の準備までしていた本人は言葉にならないほどショックだったに違いない。

 当初はリフレッシュがてらの最短復帰かと思われたが、再び一軍からお呼びがかかるまで一ヶ月を要した。特別扱いはなく、筑後遠征にも帯同。若手と共に汗を流した日々はいい経験であったと同時に、二度と戻りたくないのもまた本音だろう。そのためには一軍で結果を残すしかないことを、京田は誰よりもよく知っている。

 だからチームとしての目標が希薄になりつつあっても、京田は自分のために全力プレーすることができる。その意識を持てたことが、あの降格の最大の収穫だったのかもしれない。

 不甲斐ない結果が続けばポジションを奪われるのはこの世界の掟。どうも胸にキャプテンマークを付けた “背番号3” は、目標を見失って迷走しているように見えてならない。キャプテン就任後、人間的に大きく成長したと言われる高橋周平。

 だがその責任感が空回りの原因だとすれば、今は原点に立ち返り、自分のためにプレーするのも悪くないだろう。二軍降格を求める声が大きくなる中で、高橋はどこに目標を置いて戦うつもりなのか。プレー、そして発言を含めて注視していきたい。

(木俣はようやっとる)