ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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夢のENDはいつも憂鬱

●2-4巨人(15回戦)

 夢の内容が楽しければ楽しいほど、目を覚ましたときの虚無感は強くなるものである。我々はこの一ヶ月間、あまりにもエキサイティングな夢に浸りすぎた。プロ野球ファン全員が一致団結し、手に汗握り、そして掴み取った金メダル。東京五輪における稲葉ジャパンの戦いは、あらゆる現実のストレスを忘れさせてくれた。

 モンパチの「小さな恋のうた」の一節「♪夢ならば覚めないで」ではないが、なんならもうずっと、稲葉ジャパンの戦いを見ていたいと冗談抜きに思ったほどだ。一方でそれは、過酷な現実から目を背けたいという “逃げ” だったのかもしれない。

 坂本勇人のサヨナラ打に歓喜し、村上宗隆の一発に雄叫びをあげ、森下暢仁の快投にガッツポーズしても、ふと薄目を開ければ横たわるのは “借金10” “目下3連敗中” という絶望的な数字。そしてこんなに頼もしいジャパンの戦士たちも、五輪が終わればまた敵に逆戻りという残酷すぎる事実だった。

 なるべくその事は考えないようにして過ごしてきた一ヶ月間も、あっという間に終わりの時を迎えてしまった。本来なら楽しいはずのプロ野球の再開だというのに、なんだか気分は月曜朝のように重だるい。中日スポーツに目を落とせば、一面を飾っていたのは「機動破壊でセ界に反撃」という見出し。おいおい、プロが高校野球のスローガン(健大高崎)を拝借とはちょっと恥ずかしくないか?

 そんな感じでため息と共に戻ってきたプロ野球。その初戦、少しでも成長したドラゴンズの姿を見たかったのだが、ファンに突きつけられたのは「何も変わっていない」という身も蓋もない現実だった。

掲げるべきビジョン

 直接の敗因は又吉克樹の乱調だが、そもそも5回2死までノーヒットに抑えられ、ビシエドの一発でしか得点できなかった打線の不甲斐なさをまずは責めたい。機動破壊といえば聞こえばいいが、要するに長打をあきらめたチームの苦し紛れにすぎない。厳しい言い方で恐縮だが。

 とりわけ失望したのは9回の攻撃だ。ビエイラの166キロ計測には驚いたが、それにしたって三者凡退では情けない。終盤の大逆転で沸かせた侍ジャパンを見た後だけに、成す術もなく押し切られるドラゴンズの非力さはただひたすらに残念だった。

 あれだけの選手を揃えたドリームチームと単純に比較できないのは分かっている。ただ、野手が誰一人として選ばれなかったチームにとって、侍ジャパンの戦いぶりは学ぶべき部分がとても多かったと感じるし、刺激を受けなければおかしいとさえ思う。

 今日は坂本の猛打賞をはじめとし、鈴木誠也、吉田正尚、浅村栄斗といった各球団の金メダリスト達も、過酷な戦いの疲労を感じさせない活躍をさっそく見せたそうだ。さすがは五輪戦士といったところか。

 

「ドラゴンズから一人でも多くの代表が選出されることを強く願います」

 金メダル獲得から数日後、大野雄大のメッセージが心に響いた。球団は明確に「代表レギュラーをドラゴンズから出す」というビジョンを掲げるべきではないだろうか。

 代表に召集される選手達のスゴさをまざまざと見せつけられた一ヶ月。投手力を中心にした野球、機動力野球も大いに結構。ただビシエドとは別にもう一人、チームの看板を背負う打者の育成には着手せねばなるまい。ならば「スター育成」なんて曖昧なものではなく、「代表レギュラー育成」の方が目標がはっきりしていて分かりやすい。

 次の代表戦はWBCになるのか、それとも2028年のロサンゼルス五輪になるのか。いずれにせよドラゴンズの選手が召集されることを期待したい。そして、だからこそ代表候補の筆頭・石川昂弥の離脱がめちゃくちゃ痛いのである。桑原てめ、このやろー。

(木俣はようやっとる)

 

大野雄大コメント引用・『中日スポーツ』8月10日付