ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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X分の3

●0-2広島(14回戦)

 いよいよ東京五輪が間近に迫ってきた。大会の開催に伴い、プロ野球界は本日の試合をもってペナントレースが休戦状態に突入する。

 本日の試合を迎えるまで、ドラゴンズは32勝41敗12分けの4位。3位のヤクルトとは早くも9ゲーム差を付けられ、優勝どころかAクラス入りも風前の灯火だ。加えて、広島遠征の2試合はいずれも完敗。最悪の形でインターバルを迎えるのは、何としても避けたいところだ。

同門対決

 前半戦の締めくくりとなる試合の先発を任されたのは柳裕也だった。今シーズンはこの試合までに15試合に登板して7勝4敗、防御率は2.50。投球イニングは既に100回を超え、紛れもなくチームの主戦格として「奮投」を続けている。

 対する広島の先発は森下暢仁。昨シーズンは新人王に輝き、東京五輪の代表メンバーにも選出されている赤ヘル軍団の若きエースだ。新型コロナウイルス感染症の影響を受けたものの、二年目のジンクスはどこ吹く風。順調に大エースの階段を上っている。

 柳曰く、「暢仁のことはいつも気にしているので」。

 何せ森下は明治大学のかわいい後輩。当時高校3年生の森下を勧誘するために、善波監督と、主将を務めていた坂本誠史郎(現・阪神)、柳の3名が遠路はるばる大分まで足を運んだ逸話がある。しかも大学の寮では同部屋。最終学年では両者ともに主将を務め、チームを日本一に導いている。「メイジのエース兼主将」という特別な関係で繋がる2人が三度プロの世界で相まみえた。

至上の対決

 絶対に負けられない戦いに臨んだ背番号17は、順調にアウトを積み重ねていった。ここ2日間、ドラゴンズ投手陣がコテンパンにされている広島打線に安打を許さない。交流戦終盤から不調が続いていたのは過去の話。今やチームの大黒柱となった右のエースは連敗中のチーム状態を誰よりも理解している。

 できるだけ長いイニングを投げて、連戦で疲弊するリリーフ陣の負担を減らしたうえでの勝利を目指していたのは間違いないだろう。簡単に得点できない相手。先制点を許さぬよう細心の注意を払っていたのは明らかだった。初回に訪れた4番・鈴木誠也との対決では見事なまでのアウトローの出し入れ。球種や球速差を調整しながら、相手の主砲を翻弄した。

 ところが好事魔多し。4回裏に思わぬ落とし穴が待っていた。先頭の西川龍馬をセカンドゴロに打ち取り、3番・小園海斗の打席で「まさか」は起こってしまう。初球、捕手の木下拓哉が内角寄りにストレートを要求したものの、ど真ん中への失投となってしまった。広島が誇る有望株に完ぺきに捕らえられた打球は美しい放物線を描き、赤く染まったスタンドに着弾。「宮島さん」の大合唱の代わりに、団扇をたたいて喜ぶ広島ファンの歓声をマウンド上で噛みしめるしかなかった。

撞くや時代の暁の鐘

 相手打線に許したチーム初安打が貴重な先制ホームラン。試合の均衡が破れたことによって、一気にリズムを崩す先発投手も少なくない中、何食わぬ顔で投げ続けた背番号17は並の投手ではない。5回以降は再びゼロを並べて、7回を投げて被安打4、9奪三振の好投を見せた。

 投手がマウンド上で委縮する姿を露呈してしまうと味方は動揺し、敵は活気づくので良いことは何一つない。投げるボールは一級品でも、試合中の立ち振る舞いが芳しくない投手は思いのほか多いのが現実だ。しかしながら、現在の柳にはそのような不安は見当たらない。投球でチームをけん引するエースの役割を担うだけではなく、投手陣の精神的支柱としての役割を求めたいと考えてしまうのは私だけだろうか。現在の柳ならばその資格は十二分にあるはずだ。

 球界を代表する投手になった両雄の対決は先輩が一球に泣く格好となったが、今後何度もこのマッチアップが実現することだろう。勝ったり負けたりを繰り返す中で、ドラゴンズ投手陣のリーダーとしての資質が磨かれ、更なる名勝負を生み出してくれるだろう。(k-yad)

 

参考:『full-Count』  2019.12.25