ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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勝野に笑みを

△5-5DeNA(15回戦)

 ビシエドの打球が舞い上がったのを目で追いながら、勝野昌慶は右手を上に挙げた。次の瞬間、ボールはレフトスタンドへと消えた。グラウンドにいる間一度も白い歯を見せなかった男が、ベンチの誰よりも幸せそうな笑顔でその瞬間を過ごしていた。

進化を感じた勝野のピッチング

 勝野はこれまでの28失点のうち、初回の失点は7。3回までの失点は16を数え、総失点数の半分以上を序盤で失っている。今日の試合も不調のオースティンに早々と先制タイムリーを浴び、ビハインドの展開からスタートとなった。

 三者凡退に抑えるシーンはわずかに1度、打線もDeNA先発のロメロのパワーピッチに押され重い展開が続いていた。それでも今日の勝野はいつもとは大きく違っていた。6回、無死満塁の大ピンチを無失点で切り抜けた場面だ。

 

 今シーズン、勝野が100球以上を投じた試合はわずかに1度。球数が増えていくほどに得意のフォークの精度が悪くなり痛打されるシーンを何度も目撃してきた。勝野のフォークは三振も奪えればストライクゾーンに投げ込みアウトも奪える、いわば生命線だ。
 だが3連打を浴びた場面、打たれたのはフォークではなくカーブとストレート。そしてソトをショートゴロに打ち取ったボールと牧秀悟を併殺に仕留めたボールはいずれも低めにコントロールされたフォークだった。内野守備も見事だったが、絶体絶命の場面で投げミスをしなかった勝野のピッチングがあってこそだと思う。

 

 大ピンチを切り抜け、打席の準備をしている勝野に阿波野秀幸投手コーチがかけより、肘当てを外した。

 勝野が最後に勝利投手になったのは4月28日まで遡る。それから数えて8試合、勝野についた成績は4つの 「敗戦投手」 だ。そして今日もまた敗戦投手の可能性を残しながら試合が進んでしまうのか。運命は野手陣に託され、相手のミスが重なりながらも勝野に勝利投手の権利が転がり込んできた。

 

 1点ビハインドから一気に4点のリード。あとは9つのアウトを重ねるだけという状況になり、誰もが4連勝の雰囲気を感じていたことだろう。だが、ミスから奪い取った1イニングだけで勝つことを、野球の神様は許さなかった。

 8回に福敬登が3点を失い1点差に迫られると、9回はライデル・マルティネスが打たれ同点に。またも勝野が白星を手にすることはなかった。

気を抜いて良い場面なんて、どこにもない

 誰もが想定していなかった9回裏の攻撃を、勝野はベンチ最前線で見守った。チャンスが拡大していく場面にも勝野は気落ちすることなくチームの勝利を信じ、笑顔で声援を送っていた。しかし結果はご存知の通り、最悪の形で引き分けに終わってしまった。これで勝野が投げる試合は3試合連続の引き分けとなった。

 

 この試合のターニングポイントはどこか。確かに福もR.マルティネスもボールは定まっていなかったし、最後の木下拓哉の中途半端なバッティングもいただけなかった。だが、試合展開としては7回裏の攻撃にあったと、私は思う。

 この回からマウンドに上がった伊勢大夢に対し、阿部寿樹、高橋周平は連続三振。桂依央利こそヒットで出塁したものの、代打・堂上直倫も三球三振に倒れ、このイニングすべて三振で終わったところで、DeNAに試合の流れが再び引き寄せられたように感じた。

 あっさりとアウトを積み重ねていった7回裏の攻撃こそが、ゲームを見えないところで再び重くしてしまい、それが8回表に表面化してしまった。気づいた頃には既にDeNAがゲームの流れを手にしていたのだ。

 

 チームが27個目のアウトを取って試合が終わるまで気を抜いていてはいけない。今日の展開でも、攻撃の手は緩めることなく相手投手を脅かし続けることが大切だ。勝てる集団との大きな違いがここにある。この引き分けを教訓に、勝野が笑顔を見せる場面をもっともっと増やして欲しい。

(yuya)