ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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ポンポンポンポン

○6-2DeNA(14回戦)

 チームのピンチに颯爽と現れ、期待値を上回る仕事をささっとこなしてくれる。まるでベテラン派遣社員のような手際よさで、松葉貴大が9連戦の中日(なかび)に勝利をもたらしてくれた。

 去年もそうだった。ちょうど今頃のことだ。開幕投手を務めた大野雄大がピリっとせず、山本拓実、梅津晃大、岡野祐一郎という若手トリオも揃って安定感に欠ける投球が続いていた。ベテラン吉見一起は3試合に投げて防御率6点台と衰えを隠せず、唯一好投を続けていた柳裕也まで負傷離脱となれば、もはや明るい材料は無いに等しかった。

エース大野の大覚醒を生んだ投球

 窮地に立たされた与田ドラゴンズは、ほとんど博打に近い策に打って出た。7月15日のDeNA戦、開幕一ヶ月足らずにして借金5をこしらえたチームを救うべく先発マウンドに立った投手が、松葉だった。

 直近こそファームで7回3失点とまずまずの内容を残したものの、二軍防御率5.54での昇格では期待しろという方が難しい。ただ、松葉には少なからず過去の実績がある。どん底のドラゴンズは、藁にもすがる思いで松葉の “経験” に賭けたわけだ。

 ところが松葉は予想に反して好投をみせることになる。5回1/3を1失点という結果はさることながら、圧巻だったのはその内容だ。

 この日の松葉が5回までに要した球数は無四球の70球。長打を恐れるあまり四球が増え、球数がかさむという悪循環に陥っていた竜投手陣にとって、臆せずストライクゾーンにポンポンと投げ込む松葉のテンポよさは新鮮に映ったようだ。

 シーズン後、沢村賞投手となった大野雄が飛躍の要因を聞かれた際にこんなことを語っている。

「ストライクゾーンで勝負することの大切さを松葉から学んだんですよね。松葉が今年途中から上がってきて投げた試合で、ポンポンポンポン、ストライク取って、でも打たれないんですよね。やっぱりテンポが良いし、野手守りやすそうやし。これやな、と」

『ドラ魂キング』(CBCラジオ,12月8日)

 沢村賞を生んだ松葉の投球。この日の登板が他の投手だったなら、もしかしたら大野の大覚醒も無かったのかもしれない。

大人のピッチング

 さて、一年前の出来事を振り返ったところで、話を今日に戻そう。昨季は初登板でみごとな投球を見せた松葉だが、今年は既に4度登板していずれもチームは敗戦。松葉自身も(0勝)2敗と苦しんでいる。

 ローテの谷間を任されての今回の一軍マウンドだが、ミッションは「5回まで投げきること」。それさえクリアしてくれれば合格という程度の期待値だったが、またしても松葉はいい意味で裏切ってくれた。

 2回に無死一、三塁、3回には無死二塁と序盤は苦しい展開が続いたが、そこはさすがのベテランである。動揺で制球を乱すなんて事もなく、いずれのピンチもコーナーを丁寧に突く投球でみごとに切り抜けたのだ。相手の阪口が1死二、三塁から四球絡みで崩れたのとは対照的な “大人のピッチング” だった。

 

 最後の最後で2ランを打たれたのは余計だったが、それでも6回2失点は上出来も上出来。リーグ最強のDeNA打線に対して一切逃げることなく無四球というのも、松葉らしくて良い。

 またストライクゾーンに投げ込むだけではなく、特筆すべきはそのテンポだ。大野雄が「ポンポンポンポン」と表現したように、その間髪入れない投球テンポは往年の松本幸行を彷彿とさせる「ちぎっては投げ」のようでもあった。集中して観ていたつもりなのだが、ちょっと目を逸らしているうちに投げ終わっていたことが何球かあったほどだ。

 さあ、こうなると明日も勝ってスイープを狙いたいところ。立ち上がりに失点癖のある勝野昌慶は、松葉からバトンを受けてどんな投球を見せてくれるのか。ポンポンポンポン、連勝を伸ばそう。

(木俣はようやっとる)