ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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さあ行こう

△3-3ヤクルト(14回戦)

 昨日の現地観戦後は、球場から駅への道のりが途轍もなく遠くに感じた。改札口までの “ドラゴンズロード” は、終わりが見えない連敗中のトンネルさながらの長さ。電車の中で音楽を聴こうとスマホを取り出し、選んだ曲はMr.Childrenの「ALIVE」だった。

 私がこの曲を欲するのは、いつも苦しい場面だ。曲が流れ始めると、イントロから桜井和寿が心の声を代弁してくれる。荒んだ心を奮い立たせる大サビが終わった頃には、少しだけ気が晴れていた。

動かざること山のごとし

 今日にも自力優勝が消滅する危機的状況で、与田監督は大ナタを振るった。不動のリードオフマンの大島洋平を3番で起用し、大島の代わる1番には加藤翔平が入っている。6月9日以来3番を務めてきた高橋周平は7番へ降格。長いシーズン云々ではない。全てをかなぐり捨てて、ヤクルト3連戦の最終戦を勝ちに来た。

 自暴自棄になったかと思えるほどの打線の組み替えがあっても、全く動かさなかったのがダヤン・ビシエドだ。今シーズン先発起用された試合はいずれも「4番」。ドラゴンズ打線は背番号66を中心に回っていることがよく分かる。

 チームが混乱に陥っている状態だが、竜の主砲は動揺するような男ではない。2回表にファーストの守備で早速魅せた。初回から先発・勝野昌慶が1点を失い、この回も1死一、二塁とピンチを迎えてしまう。打席には石川雅規。小さな大投手は当然のようにバントを試みたが、一塁方向から体重108キロの大男が猛ダッシュ。素早いフィールディングで二塁走者を三塁で封殺した。昨シーズンはゴールデングラブに輝いた名手からすると、このくらいは朝飯前と言わんばかりのプレー。開始早々、不穏な空気が流れ始めたチームを落ち着かせた。

 華麗な守りで球場を沸かせた後は、自慢の打棒を披露するまでだ。三ツ俣大樹のソロホームランで1点差に迫った6回裏の第3打席では、お手本のようなセンター返しを見せた。だが、更なる得点を挙げることができず、その直後にヤクルトがホセ・オスナのタイムリーで突き放す。

 「今日もダメか…」。

 諦めムードが漂い始めた8回裏にクライマックスがやってきた。先頭打者の大島が中前にはじき返すと、続くのは「エル・タンケ」。ヤクルトのセットアッパー・清水昇が投じた2球目だった。

 竜の4番は逆球のストレートを強振。ドラゴンズファンの思いを乗せた打球をライトスタンドへ無事届かせた。打って当然のような涼しい表情でダイヤモンドを1周する助っ人が最高にクールだったのは言うまでもない。

「これでいいのだ!」とはならない

 ビシエドが主砲として最高の役割を果たしたものの、試合に勝つことはできなかった。むしろ、負けなくて済んだといった方が適切だろう。2つのクロスプレーを失点に繋げてしまった郡司裕也には結果的に高い授業料を払ってしまった。だが、このようなことは承知の上のはず。心配なのは3失点目の際に福敬登が本塁へのカバーリングを怠っていた点だ。

 ちなみに同様のプレーは初めてではなく、過去にも何度か見受けられていた。カバーリングは技術的なミスとは異なり、心がけ次第で防ぐことができるはず。これらのことは基本中の基本なだけに、残念な行動に映ってしまう。

 そして何より、同様の「ボーンヘッド」がこれまでチームとして共有されていなかったのは、個人ではなく組織に問題があることを疑われかねない。そして、もし事実ならば笑い事では済まされないのだ。

 いくらプロ野球であっても、試合中のミスはつきもの。この日は偉大なカリビアンが起死回生の一打を放って仲間を助けた。しかし、やって当然のことを怠けることが常態化すると、全体の士気に関わってくる。

 若手の登用も、トレードも現状を打開する策の一つではある。ただ、それで勝てるようになるほどプロ野球の世界は甘くない。今残されている者がやるべきことは、自分自身の仕事をきちんとこなすこと。凡事徹底が当たり前にならない限りは、5割や貯金は夢物語だろう。

 ちなみに冒頭に登場した「ALIVE」の大サビは、こうだ。

 

 夢はなくとも 希望はなくとも

 目の前の遥かな道を

 やがて荒野に花は咲くだろう

 あらゆる国境線を超え…

 

 まだ見ぬオアシスが現れることを信じて、明日を戦うしかない。

(k-yad)