ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

MENU

赤備え

●5-11広島(10回戦)

 空模様と同様の試合展開になってしまった。堂上直倫のタイムリーで幸先よく先制したものの、先発・小笠原慎之介が大誤算。2回裏に投手の大道温貴の勝ち越しの二塁打などで3点を失ってしまう。次の回も赤ヘル打線の勢いを止めることができず、更に3失点。

 そして5回裏には、鈴木誠也による少し早めの梅雨明け宣言。広島の空に描かれた虹を、呆気に取られて見上げるしかなかった。

大久保チルドレン

 昨日、仕事帰りにスーパーに立ち寄った。店内に入ると、最初に目にするのが青果コーナーだ。ここ10年ほどだろうか。野菜にも、果物にも「〇〇さんの~」という枕詞が付くことが珍しくない。消費者が産地に加え、信頼できる生産者の商品を購入することに重きを置くようになったからだといえる。

 これを野球界に置き換えると、どの指導者の下でプレーしたかで選手に値打ちが出るといったところだろうか。ドラゴンズだと、郡司裕也は慶應義塾大時代に薫陶を受けた大久保秀昭氏(現・ENEOS監督)によって、選手としての価値を高めた選手と言える。

 大久保氏と言えばアマチュア球界屈指の名将だ。選手時代にはアトランタ五輪に福留孝介らとともに出場し、正捕手として銀メダルを獲得した。その後はプロ野球界で活躍し、2006年に新日本石油ENEOSの監督に就任。都市対抗野球では3度の優勝を果たした。

 2015年からは母校の慶應義塾大の監督を務め、5年間でリーグ戦を3度制覇。2019年には明治神宮大会で日本一となり、「陸の王者」を真の王者に仕立てた。

 中心選手が多数卒業し、チームがガラッと変わった大久保政権2年目。甲子園準優勝を引き下げて入学したのが郡司だった。「優勝請負人」の期待を背に、1年秋に勝ち取った正捕手の座。当初は層の薄かった投手陣も、女房役の成長とともに投手王国へ変貌を遂げた。

 そして、最終学年では主将となった男はリーグ戦で三冠王を獲得。攻守にわたり、ここぞの場面を逃さない大久保野球の体現者として、大学球界を代表する強打の捕手に上り詰めた。

 あの郡司がドラゴンズにやってくる。低迷するチームにとって、誰よりも勝利の味を知る選手の加入は待ち焦がれていたものだった。

 疾風

 本日、郡司に出番が訪れたのは5回表。故障明けの木下拓哉の代打で登場した。つい最近まで二軍暮らしが続いていた背番号44にとって絶好のアピールの場。その打席は凡退したが、そのまま守備に就いたことで次の打席がやってきた。

 ダヤン・ビシエドと福田永将のタイムリーで2点を返し、なおも2死一、三塁の場面。自慢の選球眼でフルカウントまで持ち込むと、菊池保則の失投を逃さなかった。痛烈なライナーをセンター前に放ち、2者が生還。点差を2点まで縮めた。

 郡司らしさ満載の打撃の一方で、守備面では課題を残した。マスクを被った5回裏から3イニング連続で失点。反撃ムードに水を差してしまった。

 登板した投手の力量を指摘するのは簡単だ。とはいうものの、投手の操縦も含めての捕手の腕の見せ所。最初の打者となった鈴木誠を相手に回した直球勝負は、大胆ではなく、無謀なリードではなかっただろうか。

 勿論、プロは目先の試合だけではなく、年間通しての配球や駆け引きがある。しかし、日本屈指の強打者は2度も打ち損じることはない。それだけに、細心の注意を払ってほしかった。

 あげよかちどき

 現在、ドラゴンズの捕手陣は球界屈指の層の厚さを誇る。中村武志や谷繁元信が扇の要に君臨した時代とは異なり、選手間の実力が高いレベルで拮抗。一つの椅子を巡る争いはし烈を極めている。

 数年前ならば、1つの特徴があるだけでレギュラー争いに参戦できたが、今ではそうはいかない。打撃、捕球、送球と高次元のプレーを見せる主戦格の木下拓には、複数の長所を持たなければ太刀打ちできない。

 郡司ならば、攻撃面で他の捕手に対してアドバンテージを取ることが可能だ。2つ目はやはり「勝たせる力」を売りにしたい。勝たせる力とは何か。そのために何をすべきかを突き詰めることが、スタメン奪取に繋がってくる。

 弱点のワンバウンド処理の改善は勿論、ヘッドワークやコミュニケーション能力も含め、一つ一つのレベルアップが味方の信頼を勝ち取ることになるはずだ。

 勿論得意の打撃を伸ばすために、ミットをグラブに持ち替えることも生き延びるための立派な手段だろう。しかしながら、それは最終手段で良い。赤いリストバンドと鎧甲冑を身にまとった姿を見せてこそ値打ちが出る選手なのだから。

(k-yad)

参考:東京六大学野球連盟ホームページ