ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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勝てる投手とはかくあるべし

○6-3広島(9回戦)

 ドラゴンズは5カード連続負け越し中。とはいえこの間、3タテだけはかろうじて回避してきたため、実際の数字には字面で見るほどの絶望感はない。

 つい2週間前まで交流戦首位を謳歌していたことを思えば、あっという間に現実に引き戻されたのは無念ではあるが、チーム状態が悪いときにいかにダメージを少なく抑えるかは、長期戦を戦う上での重要なポイントでもある。

 たとえば、こう考えてはどうだろう。交流戦首位打者のビシエドが前カード無安打と冷え切っており、高橋周平もあいかわらずチャンスになると天を仰ぐばかり。チームの軸たるべき3、4番が機能不全に陥っているこの状況でも各カード1勝ずつ確保できたのは、見方を変えれば「ようやっとる」と言えなくもないのではないか。

 加えて日本人最多ホーマーにして正捕手の木下拓哉を欠いていたのだ。ある程度の苦戦は織り込み済み。その中にあって借金6で踏みとどまった……と、ウルトラポジティブな私は考えるのである。

 さて、冗談はともかく(冗談かよ)ちょうど今日で70試合目。シーズンの折り返し地点にあたるこのカードで、現在6個ある借金が返済に傾くのか、あるいは二桁に傾くのかでは後半戦へのモチベーションはずいぶんと違ってくるはずだ。

 その大事な初戦、マウンドを託されたのは勝ち頭の柳裕也。試合を動かしたのは、その9番打者のバットだった。

勝てる投手とはかくあるべし

 1点を追いかける5回表。1死から加藤翔平が7球粘った末の四球と、盗塁でたちまちチャンスメイク。しかし木下は三振に倒れ、2死二塁となって打席には柳が入った。プロ2年目の20歳、マウンドの玉村昇悟はプロ2勝目の権利を目前にして油断もあったのだろう。

 その初球、真ん中付近の甘いコースに来た141キロの半速球に対して「1,2,3」でタイミングを測ったようにバットを出すと、打球は一、二塁を抜け、俊足を飛ばして加藤が一気に生還。投手自身が打点を稼ぐ、いわゆる「自援護」の同点タイムリーとなった。

 長年セ・リーグを見ていると、チャンスで投手に打席が回ってきてもどうしても諦めが先に立つクセが付いてしまう。そのくらい投手のタイムリーは珍しく、大抵は「DH制があればなあ」などと溜息混じりにつぶやくのがお決まりである。

 しかし投手も9人目の打者である以上、黙ってアウトを献上するばかりでは勝利の女神は振り向いてくれない。昨日の負け投手・岡野祐一郎は、無死一塁でのスリーバント失敗が響いてその後苦しい投球を余儀なくされた。かたや今夜の柳は自らのバットで試合を振り出しに戻し、この回ドラゴンズはさらに2点を追加した。

 「絶対打ってやろうと思っていました」

 同点タイムリーについての柳のコメントだ。明治大学の大先輩・川上憲伸を彷彿とさせる強気の姿勢が頼もしい。重苦しい空気の漂っていた味方ベンチを活気づけた、まさしく “勝てる投手とはかくあるべし” という見本のような一打だった。

柳は大丈夫だ

 投げる方では終始ランナーを背負いながらも、あと一本を許さない粘りの投球で6勝目をゲット。比較対象にしてしまい恐縮だが、西武戦で味方のエラーから大崩れした岡野を見ていただけに、エラーのあとも気持ちを立て直し、痛手を最小限に留める柳の投球がなおさら頼もしく見えた。

 後半戦は今まで以上にフルスロットルで貯金を目指す戦いが続くだろう。安定して勝っていくためには9番打者としての役割や、動揺しない精神力がますます先発投手に求められることになる。今夜の活躍を見る限り、柳は大丈夫だ。なんの心配もいらない。

 (木俣はようやっとる)