ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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電撃トレード…さらば、加藤バズーカ!

 お昼休みを終えた午後1時、びっくりする報せが入ってきた。

 「中日・加藤匠馬、ロッテ・加藤翔平のトレード成立」

 昨日、ロッテはDeNAの国吉佑樹をトレードで獲得したばかり。そこから24時間で新たなトレードの速報。しかも今回は中日の加藤匠馬ということだからなおのこと驚きだ。
 とにかく打って、走って、肩も強い加藤翔平がやってくることは大いに期待だ。得点力不足、特に得点圏での「あと一本」が足りない中日において私のイメージする彼の「ハチャメチャさ」がチームを活性化させてくれるだろう。

地獄からの転換

 2018年の日本シリーズ、 「甲斐キャノン」 が野球ファンを熱狂させた。ソフトバンクの捕手・甲斐拓也が広島の盗塁をことごとくアウトにした強肩でその名を全国に轟かせたのだ。低く、伸びのある矢のような送球が次々と繰り出されるその姿に、中日ファンはある男の姿をダブらせた。

 加藤匠馬ーーー。

 2014年のドラフトで指名され、正捕手不在の中日において彼の持つ強肩は圧倒的有利なピースだったが、課題とされた打撃は二軍でも1割台を彷徨っていた。キャッチングやスローイングも改善の余地が多く、そのうち「加藤が生き残るのは難しいかもしれない」 という残酷な声があちこちで囁かれるようになっていた。

 しかし、この甲斐キャノンの存在で加藤に転機が訪れた。「甲斐に負けない強肩の持ち主が中日にもいる!」 と、構想外と噂されていた選手が日本シリーズをきっかけに、一目置かれる存在に早変わりしたのだ。

 さらに監督交代も加藤にとっては追い風となった。与田剛監督の就任に伴い、側近には伊東勤ヘッドコーチ、さらに中村武志バッテリーコーチが招集され加藤を鍛え抜くことを明言。加藤も期待に応え、晴れて2019年の開幕スタメンに名前を連ねることとなった。

 スローイングが改善され、それまで高めに抜けていたボールはしっかりと野手の足元に届くようになった。次々とランナーを刺す送球は甲斐キャノンになぞらえて 「加藤バズーカ」 と称され、他球団の脅威となった。
 2019年は92試合に出場し、プロに入って5年目で初めての年俸アップを勝ち取るなど、加藤にとって充実した1年を過ごした。

正捕手候補から一転、新天地へ

 さらなる進化を期待された2020年も開幕マスクをかぶったものの、気づけば木下拓哉に出番を奪われてしまった。チームが勝ち続け、勝率が上がるにつれて加藤の出番はどんどん減少。8年ぶりAクラスの瞬間には一軍登録を抹消されていた。

 今年も開幕から一軍に呼ばれることがなく、二軍でもスタメン出場の機会はほとんどなかったが、今回のトレードでロッテへと旅立つことになった。

 「僕にとってチャンスなので、このチャンスをものにできるようにやっていきたいと思います

 本日、球団を通じて加藤はコメントを出した。そう、加藤にとっては大きな大きなチャンスなのだ。聞けばロッテ側から打診があり、中日が了承したとのこと。ロッテが加藤を欲していたからこそ成立したトレードだ。

 ロッテの捕手事情は田村龍弘が正捕手として君臨しているものの、今年は故障で離脱し、ようやく二軍戦で復帰を果たしたところだ。田村が正捕手として規定打席に到達した2016年以降、二番手捕手の最多打席は昨年の柿沼友哉(129打席、打率.160)であり、その間に2番手捕手が打率2割を超えた選手は誰もいない状況だ。

 打撃が課題と言われている加藤でも2019年は245打席で打率.228を残しており、その水準を打つことができれば十二分にチャンスを掴めるだろう。今日付で同じ捕手登録の江村直也が登録抹消されており、リーグ戦再開後さっそく加藤の一軍での活躍を期待していることが伺える。

 

 ありがとう、加藤匠馬。ファームで真っ黒になりながら汗水流し、歯を食いしばりながら必死に練習していたひたむきな姿は新たなチームでも良い刺激になるはずだ。「加藤バズーカ」を武器にロッテを日本シリーズに導き、秋にまた再会しよう。

(yuya)

 

加藤匠馬コメント引用・『中日スポーツ』