ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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やらかし屋

●3-7西武(2回戦)

 始まりは些細なミスだった。先発・岡野祐一郎の立ち上がり。先頭・岸潤一郎の放った三遊間へのゴロを三ツ俣大樹がさばいたが、深い位置からのスローイングが逸れて悪送球となった。無難にワンアウトのはずが、無死一塁。

 どんなに経験豊富な投手であっても、最初のアウトを取るまでは落ち着かないと言われる立ち上がりの難しさ。ましてや実績のない、今季初登板の投手ともなれば、動揺するなという方が無理な注文だ。

 災難は続く。続く金子侑司が初球を引っ張ると、鋭い打球にライト・髙松渡が追い付いたかのように見えたが捕球ならず、たちまちピンチは二、三塁と拡大。ここまでわずか7球。その後なんとか1死を取るも、初の4番に座った呉念庭の一塁線を襲うタイムリーであっさり先制を許し、さらに死球を挟んで満塁となって……。

 失礼。せっかくの土曜の夜に、これ以上イヤな話を蒸し返すこともないだろう。要は一挙6点を失い、初回から大勢が決まった今日の一戦。今さら悔やんでも仕方ないが、どこかで拙守の連鎖を止められなかったのか。少なくとも6点を失うまでの間に、講じられる措置はあったはずだ。だが、ベンチはそれをしなかった。「怠った」のではなく、おそらく敢えて「放置」したのだ。

 今日も、そして今後も。ライト・髙松を使っている以上はこうした展開は避けられそうにない。

 

適材適所

 髙松の外野守備が “下手” を通り越してかなりキツいのは分かりきっていたはずだ。現にスタメンフル出場の昨日も再三に渡り不安定な捕球を見せており、ゲームセットを呼んだホームクロスプレーにしても、髙松の守備力を考慮したうえで西武サイドが無謀な賭けに挑んだのは明らかだった。それだって滝野要の隠れたファインプレーによって事なきを得たものの、山なりの送球がカットに入った堂上直倫の頭上を越えた瞬間には思わず目を背けたファンも少なくないだろう。

 一方、自慢の俊足は冴えに冴えている。昨日は2出塁でいずれも盗塁を決めて勝利に貢献。代走としても終盤の切り札としての地位を確立しつつあり、「髙松の足で勝った」と言える試合が既にここまで2、3個は思い浮かぶ。髙松が塁に出ることで相手バッテリーが過剰に意識し、それがミスを誘発するという好循環。ドラゴンズの選手としては盛田嘉哉(1971〜74年)以来となる本格的な “走り屋” として、髙松にはこれからたくさんの爆走伝説を作ってもらいたいと思う。

 だが、何事にも適材適所があるわけで。少なくとも現時点の髙松を守備につかせるのは自殺行為と言っても過言ではないし、この拙守が各球団に知れ渡れば、ライトを狙い打ちする打者が続々と現れるのも時間の問題だ。守備はオフにみっちり仕込むとして、今は代走に徹するのがチームならびに本人のためではないかと思うのだが。このままでは “走り屋” よりも “やらかし屋” のイメージが定着してしまいそうだ。

 

プロ向きのメンタリティ

 悪夢の初回。髙松についたエラーの内容は「悪送球」だった。愛斗のポテンヒットを処理した後、二塁への送球が逸れた際についたものだ。記録上は1個でも、まずいプレーは他にもあった。金子侑の鋭い打球は判断が分かれるところだが、追い付いたなら捕って欲しかった。また愛斗の打球は並の外野手なら捕れていたはずだ。これに加えて悪送球のオマケ付き。今日はライトが髙松でなければ、少なくとも6失点を喫することは無かったと思う。

 ただ、驚いたのはその後だ。直後の2回表、反撃に転じたいドラゴンズは木下拓哉のタイムリーで1点を返し、なおも1死一、三塁。ここで髙松がセンター前へ弾き返すタイムリーを放ったのだ。結局2点どまりで反撃は終わったが、ベンチに戻ってきた髙松が笑顔でハイタッチする姿を見て、この選手は只者ではないと感じた。

 自分のミスで背負った大量ビハインドである。普通なら世界中の悩みをひとりで背負っているかのようにヘコみまくり、まともに仕事など出来そうにもないのだが、髙松は平然とタイムリーを打ち、笑顔すら浮かべてしまうのだ。まさしくプロ向きのメンタリティ。首脳陣もこうした性格の強さを買っているのかもしれない。

 一方で、悩みを背負うとドツボにハマるのが福田パイセンだ。初回のまずい守備のあとは、2打席続けてランナーのいる場面でポップフライを打ち上げるなど精彩を欠いた。福ちゃんの打棒で髙松の図太さがあれば凄いスラッガーになっていたんだろうなあ……と。遠い目をしていたら、いつの間にか試合が終わっていた。

(木俣はようやっとる)