ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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マイナスから追い抜け

●2-6楽天(3回戦)

 昨日の勝利で交流戦首位に返り咲いたものの、あっさりと1日でその座を返上してしまった。何だかどんよりとした、足取りの重い試合展開。登板した投手が全員フォアボールを与えれば、打線はあいも変わらず得点圏でのあと一本が出ない。

 残すは3試合、舞台は所沢。たった一つの敗北で1位から3位へ、そして交流戦初の栄冠へは上位2チームの結果に左右されるため、とにかく一つも落とせない状況にあることは間違いないだろう。

 

変わった立場

 3点ビハインドの8回表、堂上直倫がフォアボールを選び今日3回目の出塁。虎視眈々と一軍昇格の機会を窺いながらそのチャンスを掴むと、今シーズン初のスタメン出場となった6月3日のロッテ戦から7試合連続安打。自分自身の居場所をしっかりと確保している。

 その堂上の代走に起用されたのが、溝脇隼人。6日のオリックス戦に続いて、1イニングだけだが8回裏にショートの守備位置に入った。

 

 溝脇が一軍でショートを守るのは初めて一軍に昇格した2014年以来、7年ぶり。今日も浅村栄斗の平凡なショートゴロを処理しただけだが、唯一の守備機会を無難にこなした。

 それだけに溝脇がショートを一定以上に守れる算段がつけば、ユーティリティとしてベンチに欠かせない選手としてのの存在価値を上げることができる。プロ年数も9年目となり、一軍での経験も積み重なってきた今こそが溝脇の株価を大きく上げる絶好の場であるのだ。

 ……と、これまでであればそのように言うことができた。ところが今年はもう立場が違う。昨年、6月30日に一軍登録されてからシーズン終了まで一軍に帯同した溝脇は39試合に出場し、8年ぶりのAクラスの過程を間近で見てきた選手だ。

 一軍にいるのは当たり前。ユーティリティプレイヤーから更に上の選手になるために、今年にかける期待は大きかったが、溝脇はキャンプ終盤に「口腔内に痛み」でリタイア。その一方で11年目の三ツ俣大樹が開幕から一軍でベンチに欠かせない選手としての立ち振舞いを見せ、今では立場がすっかりと入れ替わってしまった。

 ウエスタン・リーグでは開幕から好調をキープしていたが、福田永将が急遽一軍に呼ばれた日に石垣雅海と共に戦線離脱。内野手不足に悩んでいたチームは捕手の加藤匠馬がサードを守るなど、苦しいチーム状況を作る一因になってしまった。

 思えば溝脇はいつも故障で離脱を繰り返している。プロ初ホームランを放った2017年もその後1ヶ月も経たないうちに靭帯を故障。2年ぶりの一軍登録となった2019年、プロ初の猛打賞を記録してから1週間もしないうちに有鉤骨の骨折でシーズンを終えた。

 昨年も「幻の開幕戦」となった3月21日の試合前に腹斜筋を損傷しており、溝脇=故障体質というイメージがすっかりついてしまった。

 

逆襲のキーマン

 今年、溝脇のウエスタンでの通算打席数は1500を超えた。期待の若手選手が次々とドラフト指名される中、溝脇は二軍を卒業して一軍ベンチに居続けるべき立場になった。

 一軍に合流してすぐにアピールをしなければいけないが、今シーズン初めてスタメン出場した8日はまったく良いところを見せることができず、代打を送られて途中交代。今日は滝野要、高松渡といったスピードに長ける選手の起用があったにも関わらず、同じスピードタイプの溝脇がスタメンに名を連ねることはなかった。

 ベンチに欠かせない存在も一瞬にして風下に追いやられた。昨年掴んだ自分の居場所は完全にリセットとなった。だが、不調の選手が多い今の中日野手陣にとって 「Aクラスの空気」 を知っている選手の存在は必要不可欠だ。

(yuya)