ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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A Perfect Sky

○6-3オリックス(2回戦)

 オリックスとの本拠地シリーズGame 2は勝利を収め、カード1勝1敗のタイとした。打線はダヤン・ビシエドの2本塁打、高橋周平の久々の本塁打などで6得点をマーク。投手陣は今季最多となる8人の継投でリードを守りきった。

 

不快指数の高い前半戦

 被安打0ながら与四死球5。あまりにも投球の制御が効かなさ過ぎて、先発・梅津晃大は3回途中で降板してしまった。

 チームは初回に幸先よく3点を先制し、それなりの投球をすれば勝ちは堅いなと思っていた。だが、画面越しに伝わるのはどんよりとした雰囲気。オリックス先発の田嶋大樹もピリッとしない内容だっただけに、正直不快指数の高い試合展開だった。

 2番手・山本拓実が3回・4回を無失点に抑え、呼応するように堂上直倫の犠飛で1点を追加するも、3番手・橋本侑樹は2失点を喫する。その裏の攻撃は漆原大成の速球に押し込まれ、簡単に三者凡退。5回を終えて4-2と、ドラゴンズサイドとしては雰囲気だけでなく、スコアもどんよりとしてきた。

 7回以降は祖父江大輔、福敬登、又吉克樹が控えるだけに、6回をどうするのかは一つのポイント。ここで考えうる選択肢は、前日も投げた藤嶋健人とランディ・ロサリオ、先週のデビュー戦以来投げていない近藤廉、久しく1イニング未満しか投げていない谷元圭介の4人だ。

 なかなか難しい選択だと仲間内でも話す中、マウンドに上がったのは背番号54・藤嶋だった。

 

相手の勢いを断ち切った藤嶋

 6回のオリックスは6番・中川圭太からの攻撃。T-岡田、紅林弘太郎と続く下位打線だが、いずれも長打のあるバッター。オリックスとしては前の回に得点した勢いを買ってさらに反撃を、というところ。藤嶋には持ち味の角度のあるボールを投げ込み、打球を上げないようにと、願っていた。

 果たして、藤嶋はこれ以上ないピッチングを披露してくれた。

 中川には低めスプリットを見送られ、ボール先行のカウントを作られるも、直球で押し切ってセンターフライ。T-岡田と紅林に対しては、変化球中心の配球で連続三振に。前夜に続いての見事な三者凡退である。

 3アウト目を取った瞬間、藤嶋は勢い良く駆け足で一塁側へ。ベンチ前で待ち構えて、フィールドを守っていた野手陣にハイタッチをかましていく。ファンにとってはおなじみの光景だが、どんよりしていた雰囲気が晴れたような気がしたし、今日は一段と明るい気持ちにさせられた。

 7回以降、一時は1点差に迫られるも、ビシエドと高橋周の連続アーチで相手の息の根を止めた。リードを保ったまま勝利にたどり着けたのは、6回の藤嶋の投球も重要なポイントだと思う。あそこで1点でも取られて連続イニング失点を喫していたら、試合はもっとカオスなものになっていた。

 

この場で投げられている奇跡

 ふと、藤嶋がこの場で投げられているのは奇跡なのではないかと回想する。

 プロ3年目、2019年の1月。思いもよらぬ右手血行障害の発症。一度目の手術では症状が良化せず、投手生命の危機にさらされた。幸い二度目の手術で好転し、その年の夏以降は故障なくリリーフ陣の一員として投げ続けている。

 藤嶋の姿からは「投げられる喜び」を感じる。躍動感のあるフォーム、テンポの速い投球間隔、そして時折見せる笑顔――投げることにウズウズして、解き放たれているような印象だ。

 血行障害から復活した直後、藤嶋はインタビューでこんなことを話している。

「考えてもしょうがないのかなって。手術した時もダメならしょうがないって思いました。今でも手が冷たくなる度に不安にはなりますよ。でも、好きな野球やれているんだから、それくらい大丈夫だって思います」

 好きなことをやれているのだから、それくらい大丈夫。辛い経験を乗り越えた右腕の心根には、ぶっとい柱があるものだ。また一つ、プロ野球から大切なことを教えられた。【ikki】

 

選手コメント引用:「J SPORTS野球好きコラム」