ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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投手VS投手

△2-2ロッテ(2回戦)

 眼前に見えていた 「勝利」 の2文字は寸前のところで消え去り、その瞬間 「9回裏の攻撃」 が出てきてしまった。ゲームセットのその声を聞くまでは何が起こるか分からない。逃した勝ち星を悔やむより、勝ち越しを許さなかったことを良しとして切り替えていくしかない。

 

柳に続け!

 先発は小笠原慎之介。前日の柳裕也の好投に引っ張られるように快刀乱麻のピッチング。スピード以上にノビを感じるストレートと、タイミングを外すチェンジアップを有効に使いロッテ打線にバッティングをさせなかった。

 6回の裏に代打が出た関係でマウンドを降りたものの、無失点ピッチングは見事。これで先発投手の無失点イニングは 「17」 に伸びた。

 

 小笠原は中日の選手にしては珍しく、プレー中に笑顔を見せることがある。柳や大野雄大のようにピンチを切り抜けたときに闘志を剥き出しにするのではなく、 「あ~良かったぁ」 といったような感じでベンチに戻ってくる。その姿は今年24歳になる小笠原には失礼ながら、甲子園で優勝したときの “小笠原少年” を彷彿とさせてしまう。

 

 東海大相模が凄い ーーー。小笠原が在学時には「140キロカルテット」として話題を呼び、最後の夏は全国制覇。決勝戦では9回に自ら決勝のホームランを放ち、優勝を手繰り寄せた。この時対戦相手のマスクをかぶっていたのは今のチームメイト、郡司裕也というのは、郡司がドラフト指名されたときにもニュースになった。

 プロ入りしてからこれまで通算12安打ではあるが、小笠原は在籍6年、毎年安打を記録している。球団公式のYoutubeでは豪快なスイングからライトスタンドへ放物線を描くバッティング練習を見ることができる。

 

投手同士の熱い対決

 2回裏の第1打席、チャンスの場面で打席が回ってきた。相手先発の岩下大輝のストレートを振りにいくも2つ空振りで追い込まれた。4球目をなんとかファールで当てた後、岩下の得意球でもあるフォークボールにバットは空を切った。その時、小笠原は笑みを浮かべながら、口は「凄いな」と動いたように見えた。

 その直後の3回の表、今度は岩下が打席に立った。追い込んでからの4球目、変化の大きいカーブで見逃し三振を奪った。岩下は半歩、後ろに下がったがその瞬間にストライクがコールされた。まるで「俺の変化球だってこんなに曲がるんだぞ」と対抗心を見せるかのような、素晴らしいカーブだった。

 第2打席、小笠原はまたもフォークに空振り三振。岩下の第2打席は浅いレフトフライ。ともに2打席ノーヒットではあったが、小笠原はフェアゾーンに飛ばされたことに若干悔しそうな表情を見せていた。

 近年はパ・リーグが圧倒的な強さを見せつけ、「セ・リーグもDH制の導入を」という声がちらほらと挙がるようになってきたが、投手同士が18.44メートル先で対峙することにも野球の面白さは潜んでいる。

 

 自分の得意球を相手投手の打席で見せつけ合うことで、お互い「これはそうそうに点が取れないな」と思わせ、質の高い投手戦が繰り広げられることもある。毎回のようにピンチを作った岩下だが、勝負所ではフォークボールを効果的に使い、ピンチを切り抜けた。その裏には小笠原の勢いあるボールを打席で目の当たりにしたことが作用していたのかもしれない。

 

こぼれ話

 岩下は高校3年の夏に甲子園に出場した。このときの石川県予選決勝、岩下のいる星稜高校は小松大谷高校に8-0とリードを許しながらも9回に9点を奪い大逆転勝利で甲子園の切符を手にしている。この時9回に岩下は特大のホームランを放ち、ドラマを彩っている。

 いやはや、ゲームセットの瞬間まで何が起こるか分からないものだ。

(yuya)