ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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不意を突く

○4-3ソフトバンク(2回戦)

 絶対王者ソフトバンクを打ち破っての今季初3連勝。この展開を予期できた者など誰一人としていないのではないだろうか。

 何しろ23日には今季最多タイの借金7をこしらえ、「先制されると3勝15敗4分」なんてネガティブな情報が『中スポ』一面を飾ったばかり。翌日こそ福谷浩司の好投などで勝ち、なんとか最悪な形での交流戦突入こそ免れたものの、決してチーム状態は上向きと呼べるものではなかった。

 それがどうだろう。蓋を開けてみれば連勝スタート。虐殺を喰らうのも覚悟したソフトバンク相手に2試合とも内容の伴った勝利を収め、広島を抜いて4位返り咲きときた。

 嬉しいのはもちろんだが、我が身(というかドラゴンズの身)に起きたことが信じられない気持ちの方が強く、まだ連勝の実感が沸いてこないのが率直なところである。

 

周東を刺す

 「不意を突く」ーー。今日の試合はまさにこの言葉が、主に終盤の攻防におけるテーマだったように思う。

 逆転に成功したドラゴンズは昨日と同じ2点リードで終盤8回を迎えた。直前の7回裏には2死一、三塁のチャンスを逸してやや嫌な流れを感じながらも、自慢のリリーフに任せておけば大丈夫だと高を括っていたが、甘かった。1死一塁として柳田悠岐。真ん中高めの真っ直ぐ。確かに不用意な一球ではあるが、それを流し打ちでバンテリンドームの左中間スタンドに放り込むのだから、やはり規格外の化け物だ。

 動揺した藤嶋健人は続く中村晃にもヒットを許すと、すかさず相手ベンチは代走に周東佑京を送った。過去5年で4度の日本一に輝く最強軍団が、この場面を今夜の勝負どころだと読んだのだ。張り詰める緊張感。ならば、と与田ドラゴンズも動く。藤嶋に代えて福敬登を投入。

 その初球、と思いきや福が素早く一塁に牽制球を投げ、捕球したビシエドが間一発タッチ。微妙なタイミングとなったが、リプレー検証の結果、アウトの判定は覆らず。不意を突かれた周東にはプロ入り初の牽制死が記録された。

 

「欲しい場面」で出た!

 すると8回裏。最悪でも引き分けに持ち込みたいドラゴンズは1死走者なしで、打席には阿部寿樹。その3球目をコンパクトに振り抜くと、鋭い弾道のライナーがそのままレフトスタンドに突き刺さった。値千金の勝ち越しホームランである。速球を苦手とする阿部が、内角高めの151キロに腕を畳みながら反応。そのバッティングに、かつての背番号「5」、和田一浩の姿を重ね合わせたのは私だけだろうか。

 いや、和田なら最初からホームランを期待する場面だが、失礼ながら阿部には「まずは出塁を」くらいの望みしか託していなかったことを白状しよう。

 いかにホームランを打たずして勝てるかを追求するかのような今季のドラゴンズ野球。まさかこんなにも「欲しい場面」で都合よくホームランが飛び出すとは想像すらしていなかったのだが。

 そんな中で生まれた、あっと驚くような阿部の一振り。「中日はホームランを打たない」と聞かされていたであろうソフトバンクとしても、いささか不意を突かれるような一発だったに違いない。

 もし「聞いていた話と違う!」と言うなら、「こっちだって驚いてるんだ!」と返したい。そのくらい、まさかのホームラン。ある意味で一番不意を突かれたのはドラゴンズファンなのかも知れない。

(木俣はようやっとる)