ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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ここぞのバイプレイヤー

○4-1巨人(11回戦)

 交流戦前の最終試合。パ・リーグの猛者たちとの対戦を前に景気づけがしたいところだが、交流戦直前の試合にトラウマを抱えるドラゴンズファンは今でも多いはずだ。

 話は交流戦がスタートした2005年に遡る。セ・リーグの首位を走っていたドラゴンズは前年にリーグ優勝を果たし、更には、横浜(現・DeNA)から本塁打王のタイロン・ウッズを獲得。攻守に充実した戦力を誇ったチームが仕上がり、球団史上初の連覇を誰もが信じていた。

 しかしながら、迎えた5月5日、思わぬ事態が発生した。内角攻めに苦しんでいたウッズがヤクルト・藤井秀悟の顔面付近への投球に激高。藤井を右ストレートでKOしてしまった。10試合の出場停止処分を受けた主砲を欠いたドラゴンズは、翌日からの交流戦突入と同時に大失速。首位の座を追われたドラゴンズは、懸命の追い上げを見せたものの2位に終わった。今年も願いはただ一つ、「とにかく無事に交流戦へ」。

 

第三の男

 試合前に発表されたスタメンには思わぬ名前があった。この試合の先発マスクを被るのは、今シーズン初先発の桂依央利。開幕から一軍に帯同しているものの、出場したのはわずかに3試合しかない。それもそのはず、桂の現在の立ち位置は第三捕手。正捕手に君臨する木下拓哉がほとんどの試合でスタメンを張り、二番手の石橋康太は代打も含めたサブの立場で出番を待っている。

 桂の役割は万が一の時の備え。出番に恵まれなかったとしても、チームのサポートをしながら勝利に貢献しなければならない難しい立場だ。黒子に徹し続けた末に巡ってきた大役だったが、桂は求められた役を演じきった。

 この試合でバッテリーを組むこととなった福谷浩司は、4月22日のDeNA戦で今季初勝利をマークした後は3連敗中だ。この日も今ひとつピリッとしない立ち上がり。結果こそ三者連続三振だったが、真ん中付近の危ないボールが散見しており、3番・吉川尚輝に対しては11球も投じてしまった。

 一方で、好調をキープするゼラス・ウィーラーに対してのカーブ攻めは他の捕手にはない配球。この配球には、巨人サイドも面食らったのではないだろうか。昨日ジャリエル・ロドリゲスが150キロ台のボールを続け、後続の橋本侑樹もストレート勝負で痛い目を見たのとは対照的な攻め方だった。

 

「いってきます」「いってらっしゃい」

 序盤の2イニングを0で片付けたが、巨人打線がおとなしく眠ったままで終わるはずがない。ドラゴンズが3点を先制した直後の3回表、下位打線でチャンスメイクをされ、2番・ウィーラーにタイムリーを許した。福谷の調子を考えると、逆転を許すことも覚悟しなければならない場面だったが、心配ご無用。女房役は動揺することなく、失点を最小限にとどめた。 

 ビッグイニングにもなりかねないピンチを凌いだ後の桂は、福谷をリズムよく投げさせることに全集中。3回終了時まで60球を費やした投球数も、4回から6回の3イニングではわずか39球。序盤から苦しんでいた福谷をクオリティスタートに導くとともに、2勝目もプレゼントする会心のリードだった。

 与田監督は「素晴らしかった。今季初スタメン。桂も毎日必死に練習している姿をみている。福谷も決して万全じゃなかったがリードで助けた。本当によくやってくれた。」と高評価。バッテリーを組んだ福谷も、「桂が本当にうまくリードしてくれた。ランナーはいっぱい背負ったが、『絶対に負けないぞ』という気持ちで投げ込んだ」と女房役をたたえた。

 試合に勝ち、五輪予選に参加するキューバ勢を送り出すことができた。「とにかく無事に交流戦へ」。伏兵の大仕事によって、今年は間違いなく願いが叶った。

 ライデル、ジャリエル、行ってらっしゃい! 帰ってくる頃には、少しでも良いチーム状態にしておくから思いっきり暴れてこい‼︎ 東京五輪の決勝でまた会おう‼︎

(k-yad)

 

与田、福谷コメント引用:中日スポーツ