ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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暗黒時代の希望だった男

○5-1DeNA(10回戦)

 京田陽太は球界を代表する凄いプレイヤーになるに違いない!ーーそう確信してから、もうどれだけの時間が過ぎたのだろう。

 暗黒真っ只中の2017年、彗星の如く現れた背番号51は連日ヒットを量産。遂にはあの長嶋茂雄が持つセ・リーグのルーキー最多安打記録にも肉薄するなど、低迷するチームにあって数少ない希望としてファンの精神安定剤のような役割を果たしたのだった。

 特に鮮烈なインパクトを与えたのが5月24日、横浜スタジアムでおこなわれたDeNA戦だ。1番ショートで出場した京田は3回表の第2打席、相手先発・ウィーランドから右中間へと打球を弾き返すと、中継に入った二塁手の緩慢な動きを見て一気にホーム生還(記録はタイムリー三塁打)。

 さらにこの日は6回表の第3打席にもライト前ヒットで猛打賞を記録すると、犠打で二進した後、続く大島洋平の打席のときにワイルドピッチでボールが一塁方向へ転々とする間に躊躇することなくホームへと突入。二度の “神走塁” のみならず打っては4打数4安打の大活躍で、井端弘和の退団以来空席になっていた正遊撃手の誕生を強烈に印象づけたのだった。

 

球界随一の “貧打のレギュラー”

 だが、京田がこれほどの活躍を見せたのは、残念ながらこの日が最初で最後だった。超人的な守備の上達は誰もが認めるところながら、肝心の打撃は一貫して打率2割4分前後から上昇できず。ゴールデングラブ賞の記者投票に対して「打てばいいんでしょ」と皮肉たっぷりに言ってのける反骨心はプロ向きだと思うのだが、この発言もあって期待された昨シーズンも打率.247と、気迫は数字には表れてくれなかった。

 球界を代表する凄いプレイヤーどころか、球界でも随一の “貧打のレギュラー” としてその立ち位置は年々微妙なものになっている。迎えた今年は臨時コーチ・立浪和義の指導を連日キャンプで受け、5年目の覚醒が期待されたものの、ここまで打率ランキングの下から2番目と例年以上に苦戦。史上最悪レベルの低迷にあえぐドラゴンズ打線にあって、その象徴のような存在に甘んじている。

 昨年のドラフトでは3位指名で同じショートの土田龍空を獲得。あからさまに京田の後釜を見据えた戦略であり、このまま京田が低迷を続ければ、いくら守備が巧いといえども「土田を使え」との声が挙がるのは避けられないだろう。

 このまま京田は終わってしまうのか? そんな不安を払拭するように、16日のヤクルト戦では土壇場での同点タイムリーを含む猛打賞を記録。勢いそのままに、横浜の地でもバットは快音を響かせた。

 

褒める気はない

 4回表の時点で早くも6打席連続ヒットとなる3安打目。続く第4打席では1死満塁からダメ押しの犠牲フライを放つなど、今日の京田は4打数3安打3打点と連敗ストップに大きく貢献した。まだ覚醒と言うには早すぎるが、それでも打率は.247と一応見られるところまでは上げてきた。あとはこの状態をキープできるかどうか。

 もちろん、この程度で褒める気は毛頭ない。好調といってもまだ3、4試合。これまでチャンスで京田に一本出てさえいれば勝てた、ないし楽な展開になっていた試合が幾つあったか。まだまだ今までの負債を取り返せたとは言えないし、上位打線を打っている以上はこのくらいの好調で満足してもらっては困る‼︎ とか言いながら、今日の活躍がめちゃくちゃ嬉しいのもまた事実なのだが。

 チャンスでどうしようもない凡退をしたり、見え見えの外角変化球に釣られて空振り三振した時なんかは思わず放送禁止用語が口に出るくらいイラつくこともあるが、やっぱり暗黒時代に一筋の希望を見せてくれた京田のことは基本的には嫌いになれない……というか大好きなのである。

 まさにモー娘。で言うところの「大キライ…大キライ…大キライ…大スキ‼︎」。魅惑のサマーナイトタウン・横浜で躍動する姿を明日もぜひ見せて欲しい。

(木俣はようやっとる)