ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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時にはエースのように

◯2-0広島(8回戦)

 今朝、中日スポーツを一瞥してため息が出た。一面の見出しは「采配ちぐはぐ 選手も躍らず」。

 渋谷真記者による名物コラム『龍の背に乗って』では8日の敗戦における采配の疑問点を複数挙げた上で、「最後の勝機を逃したバント失敗は、果たして選手だけの責任だろうか…。」と結んでいる。渋谷記者がここまではっきりと首脳陣に物申すのは今季だと初めてのことだ。

 ただ、負けが込み始めると厳しい論調を載せるのは恒例でもある。実は昨シーズンも借金8を抱えた7月25日に「与田采配裏目裏目 3つの疑問」という見出しが一面を飾っていた。

 親会社ならこのくらい厳しくて当然だ!

 いや、もっと前向きに鼓舞するべきだ!

 どちらも尤もな意見だし、どちらが正しいというものでもない。だが他のスポーツ紙に比べて中スポはドラゴンズファンの読者が圧倒的に多く、その分強い影響力を持つ。Twitterでは朝からこの見出しをめぐって、ファンの間に険悪な空気が漂っていたのは事実だ。

 最下位に転落したわけでもなく、借金も一桁。何よりもまだ100試合以上残っている。もちろん試合を見ていれば采配に「?」マークが浮かぶことだってあるが、それは与田監督に限った話ではない。多かれ少なかれどこのチームのファンも自軍の監督の采配には不満を持っているものだ(与田ほどダメな監督はいない! と仰る方もおられるが、谷繁のときも、森のときも、何なら落合のときも同じような監督批判を何度となく目にしてきた)。

 長いシーズン、波は必ずある。昨季に続いて今年も負のバイオリズムが序盤に来てしまったが、勝負はまだ先だ。匙を投げたくなる気持ちも大いに理解しつつ、今はまだ前向きに見守っていきたいと思う。

 

柳、5年目の大覚醒

 阿部寿樹の懸命のグラブトスが実り、間一髪で白球がビシエドのグラブに収まった。その瞬間、連敗は2でストップ。順位も再び4位に戻した。ホッとしたような表情のマルティネス 。ベンチでは与田監督も笑顔をみせていた。

 試合前から暗雲が漂っていた。突然飛び込んできた、大野雄大の登録抹消という最悪なニュース。ただでさえ厳しい状況だというのに、野球の神様はなぜこれほどまでにドラゴンズに試練を与えるのだろうか。重苦しい空気からチームを救い出したのは、柳裕也だった。

 8回2安打無失点。ランナーを許したのは3回表のみ。結果も完璧なら、内容はそれ以上に圧巻だった。11奪三振の内訳に着目すると、フィニッシュ・ボールの球種はストレート4、チェンジアップ3、カットボール3、縦スライダー1と複数の持ち球をバランスよく駆使したことが分かる。

 打者からすれば球種が絞れない上に、時折投げる110キロ台のカーブも意識しなくてはならないのだから堪らない。奪三振58、奪三振率11.11(!)はいずれもリーグ1位。それだけではない。3.5を超えると優秀と言われるK/BBは、8.29という異次元の数値を叩き出している。かつてのドラ1右腕はプロ5年目を迎えてまさしく大覚醒したと言えそうだ。

 

完投、完封は時間の問題

 そんな中で本人がおそらく最も誇りにしているのはリーグ1位の投球回数47ではないだろうか。昨夏、エース大野が完投勝利を続けざまに記録していたとき、背番号17は「見習うべきところがたくさんある。僕も1イニングでも多くというのを目指したい」と刺激を受け、さらなる飛躍を誓ったのだ。

 今シーズンはその柳が誰よりも多くのイニングを消化し、投手陣を牽引している。惜しむらくは球数が嵩(かさ)んで完投、完封を逃したことか。今日の柳なら仮にそのまま9回のマウンドに立っていても難なく試合をクローズしたことだろう。

 プロ5年間で完投は意外にもわずか2度。ただ、今日のような投球ができれば3度目も時間の問題だろう。もちろん3度と言わず、投げるたびに完投するような姿を期待したい。そう、目標にする大野のように。

(木俣はようやっとる)

 

柳コメント引用「スポニチアネックス」2020.8.18付